■ダイムラークライスラーも見切り、残ったのは三菱グループと再生ファンド
今回のリコール隠しは、三菱自動車の経営にも深刻な影を落としている。4月にダイムラークライスラーが増資引き受けの拒否を通告、エクロート社長も退任した。
ダイムラークライスラーはもともと、三菱ふそうに興味を持っていたとされる。その証拠に同社の子会社であるふそうに関しては、従来通りの関係を維持している。
これに慌てたのが三菱自動車。三菱重工、三菱商事、東京三菱銀行の主要3社は緊急会議を招集、「スリーダイヤを守る」方針を確認するとともに、スポンサー探しに奔走する。結局、再生ファンドのフェニックス・キャピタルやJPモルガン、三菱や取引先各社から合計4960億円の資金を調達し、これを元手にリストラや再生のための新車開発を進めることになった。
■系列ディーラーの苦悩、引き抜き合戦も
顧客との折衝や無料点検に追われる系列販売店は“利益なき繁忙”に苦悩している。今年1−7月の累計販売台数は、乗用車で前年同期比4割減(約5万7000台)、ふそうのトラックは前半の“貯金”が効いて同6.6%増(約4万6000台)だが、7月単月では3割減と、トラック4社のなかでは最も落ち込んだ。
乗用車と違って生産財であり、簡単には売り上げが落ちないはずのトラックでも、『キャンター』など“浮動票”が多い車種で影響がジワリと出始めている。また、中央省庁や自治体の指名停止の影響も痛い。
経済産業省の調査によると、対象91社のうち、過半数が「6月に販売が前年比で半減した」と回答。同月までに3社が三菱自動車との特約店契約を解除し、このうち2社が会社精算に追い込まれた。
この動きは今後も続きそうだが、関係者によると、スズキなどライバルメーカーが特約店契約を解除したディーラーに接近しているという。販売網が減るだけでなく、ライバルメーカーの営業所に鞍替えすることになり、三菱にとってはダブルパンチと言えそうだ。
■バッシングも過熱…三菱側にも問題あり?
メディアの三菱バッシングもとどまるところを知らない。最近では、三菱製乗用車やトラック・バスの車両火災報道が相次ぎ、「燃えているのは当社製のクルマばかりではないのだが…」と両社を困惑させている。連日、新聞の社会面を飾っているせいで、一般の人たちにも「三菱車は危ない」という風潮が形成されつつある。
メディアという意味では、別の問題も浮上している。自動車専門雑誌がこの件で取材や情報提供を申し込んでも、三菱側の反応は驚くほど鈍いというのだ。ある雑誌の編集長は「こういう時だからこそ、読者や三菱ファン、ユーザーに正確な情報を伝えたいのに、対応はサッパリ」と憤る。メーカーがメディア差別をしているとは思いたくないが……。
■きっかけは、ふそうの脱輪事故
■メンツを潰された国交省の心中
■出るわ出るわ、100万台近く
■変わらなかった企業体質
■ダイムラークライスラーも見切り、残ったのは三菱グループと再生ファンド
■系列ディーラーの苦悩、引き抜き合戦も
■バッシングも過熱…三菱側にも問題あり?
■再生シナリオは大丈夫か
■リコール隠し問題が突きつけたもの