『キャラバン』は『NV350キャラバン』へのフルモデルチェンジによって大幅な進化を遂げた。これまでのモデルでは室内空間のスペース効率で『ハイエース』に差をつけられ、それが販売台数に直結していたが、今回のモデルはハイエースを一気に追い上げるモデルに仕上げられた。
NV350キャラバンではホイールベースを延長して広い室内空間を作ったほか、燃費性能に優れた新エンジンを搭載し、充実した快適装備を備えたのがポイント。
外観デザインは、4ナンバー車の規格をいっぱいに使った上で、ライトバンらしく四角く仕上げられた。これに加えてフロント部分やコーナー部分に丸みを持たせることで、新鮮なイメージを作っている。
室内空間はラゲッジスペースがぐんと大きくなった。荷室長を4ナンバーの小型商用車でトップの3050mmとして余裕ある積載性を実現し、その荷室空間を乗員と積載物とで最大限に活用できるように後席に5:5分割可倒式シートを採用した。長尺物を収納したときでも後席に1人が座れる設定だ。
荷室をより使いやすくアレンジできるラゲッジ・ユーティリティー・ナットを装備したのも利便性を向上させる要素だ。
エンジンを運転席下に搭載する1BOXパッケージなので、運転席が高い位置にあって乗降性は良くない。乗るときにはステップを使えば何とかなるが、降りるときにはステップを使いにくいので更に大変だ。運転席に座ると、ステアリングホイールは水平に近く、正に商用車の感覚である。
装備は乗用車感覚のものが用意される。商用車初となるプッシュ・エンジン・スターターや、インテリジェントキー、足踏み式パーキングブレーキ、メーターパネル中央の車両情報ディスプレイなどが利便性、快適性を向上させている。
試乗したのは2.0プレミアムGXで、直列4気筒2.0リッターエンジンと5速ATを組み合わせて搭載する。エンジンの実力は96kW/178N・mだから、商用車として平均的なもの。
乗る前には1800kgを超える重量ボディに見合うかどうかが心配だったが、実際に走らせて見ると意外なくらいに良く走った。大量の荷物を積んだときには走りも鈍くなるだろうが、空車状態では何の問題もなかった。現実には多くのユーザーがディーゼル車を選ぶのだと思うが、5速ATの変速フィールにも不満はなく、ガソリン車でもまずまずの走りである。
動力性能はともかく、足回りのフィールは乗用車のものとはまるで違った。縦揺れの大きなトラック感覚の走りだからだ。これは荷物を積んだときには収まりが良くなるのだろうが、空車状態では不快な振動が大きかった。
更に問題だったのはシート。平らでクッション薄いシートの座り心地は快適なものではないし、腰痛が出やすくて短い距離でも走らせるのがつらい感じになった。シートについては大幅な改良を望みたい。
プレミアムGXは装備を充実させた上級グレードで260万円台の価格が設定されている。カーナビなどのオプションを装着したら300万円くらいになる計算だ。それを考えると、走りの上質さについて、もっと乗用車らしさが欲しい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★
オススメ度:★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。