【ロイヤルエンフィールド コンチネンタルGT 試乗】最新鋭バイクにはない、まったりな日常性能…和歌山利宏

モーターサイクル 新型車
ロイヤルエンフィールド コンチネンタルGT
ロイヤルエンフィールド コンチネンタルGT 全 24 枚 拡大写真

インド企業のロイヤルエンフィールドは、そもそもは英国で生まれの名門である。1901年に英国でバイク生産を開始し、名声を得るも1970年に倒産。ただ、1954年にインドに現地工場を設立していたため、インド側で生産が続行され、そして1995年にボルボとの合弁でエーカーグループ傘下となり、今日に至っている。

ロイヤルエンフィールドは、1949年型『バレット』を起源とした単気筒車を作り続けてきたが、2008年型 バレット ではエンジンを新設計した。

旧来のクランク・ミッション別体式エンジンを、UCE(ユニット・コンストラクション・エンジン)と呼ばれる一体式に改め、アルミシリンダや500ccエンジンのモデルには電子制御式燃料噴射の採用(350ccモデルはキャブ式のまま)、伝統の右チェンジを左チェンジ(操作系統が現在とは左右逆であった)に改めるなど、60年ぶりにフルチェンジされたのが現行 バレット なのだ。

ただ、良い意味でも悪い意味でも、生きた化石であることは事実である。日常域での面白さには現在のバイクが忘れているものがあっても、シングルループのダイヤモンドフレームは剛性的に厳しく、スポーティなコーナリングを期待すべくもなく、80km/h以上での安定性や振動には問題があった。

今回試乗した『コンチネンタルGT』は、そんな旧来のものを今日に適合させるべく生まれたモデルだ。ボアアップによって排気量を499ccから535ccに拡大、吸気バルブ径を拡大しクランクマスを軽減するなど、高出力化と高回転まで回しやすいものとしている。

また、フレームもロイヤルエンフィールド初のダブルクレードルタイプとし、スタイリングは、1965年の『コンチネンタルGT250』をイメージしたカフェレーサーとなっている。

跨がると、カフェレーサースタイルながら、ライディングポジションも含め、ごく普通のストリートスポーツ風である。改めて、昨今のバイクの先鋭ぶりを思い知らされるライポジだ。

ロイヤルエンフィールドの他モデルと比べると前傾スタイルだが、連続2時間程度の街中走行も苦にならない快適性が保たれている。カフェレーサータイプにありがちなハンドルの遠さとか、ステップの後退し過ぎといった個性の強さもない。

試乗車にはオプションのバーエンドミラーが装着されており、後方視認性も良好である。足着き性も良く、欧州製のストリートスポーツ程度のハンドル切れ角が備わっており、取り回しもしやすい。

エンジンは、セルでもキックでも始動性は良好で、しかもキックスタートの難しさはない。試乗車のマフラーはオプションの小型タイプで、排気音は少々大きいが、心地良いサウンドが届く。やはりビート感はビッグシングルならではのものだ。

1000rpmのアイドリング回転のまま、クラッチミートすれば車体はスルスルと前へ出て行くし、スロットルを開ければ着いてくる。これを2速で試してみると、さすがにエンストしてしまうが、これなら粘りも申し分ない。

ともかく、日常域でここまで表情が豊かで楽しめるバイクはあまりない。60km/h走行時のギヤに対するエンジン回転数は、5速だと2000rpmで鼓動を楽しむのんびりモード。4速では2500rpmで快速モード。そして3速だと3000rpmで、4000rpmのトルクピークに向かっての加速Gが高まっていくのを実感できるスポーツモードとなり、回転域で性格と表情を変えていく。

歩くようなスピードでの面白さは、既存モデルのほうが上手かもしれないないが、それでもゆっくり走って楽しめる稀有なバイクであることに変わりはない。

ただ、クルージングで心地良いのも、せいぜい3500rpmまで、5速で100km/h以下である。特に4000rpm以上ではハンドルの振動が苦痛になってくる。高速道路の長距離移動には向かないが、80~90km/hで走行車線を流し、必要に応じて一気に追い越すという走りなら、十分に実用的である。実際、メーター読みで145km/hにも達する快速ぶりである。

ハンドリングは軽快感の中にも、ステアリングにしっかりとした重厚さを感じさせる。前輪分布荷重は大きくなさそうだが、フォークオフセットが今日的に小さく、大きいトレールによって、操舵力が重めといった感じである。

そのため、往年のフォークオフセットが大きいカフェレーサーのように、操舵の大きい動きを引き出して駆っていくハンドリングではない。とは言え、前後18インチホーイルらしくライダーへの依存度が高く、決してお手軽ではない。ステアリングをコーナーに向け、曲げるというコントロールを堪能できる。マシンの存在感と主張が伝わり、操る面白さは濃厚である。

先述の高回転域での振動もこの高速安定性も、ロイヤル・エンフィールドの既存モデルだと許容できるのは80km/h以下であったが、このコンチネンタルGTだと許容限界が100km/h以上に引き上げられている。そして、より現実的になったことよりも印象的なのは、日常域に特化していることへの感激であった。

和歌山利宏|二輪ジャーナリスト
1954年生まれ、1975年にヤマハ発動機に入社し、様々なロードスポーツバイクの開発に携わり、テストライダーも務める。また、自らレース活動も行ない、鈴鹿8耐第5回大会では4位入賞の成績を持つ。現在は二輪ジャーナリストとして執筆活動、ライディングインストラクターなど多方面で活躍中。

《和歌山 利宏》

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