マツダ ロードスター 主査「山本先輩」が42年ぶりに母校へ、明日のエンジニアに“夢”語る

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マツダ ロードスター 山本修弘主査が母校、高知県立高知工業高等学校で講演
マツダ ロードスター 山本修弘主査が母校、高知県立高知工業高等学校で講演 全 38 枚 拡大写真

マツダの新型『ロードスター』開発主査をつとめた山本修弘氏が16日、42年ぶりに母校である高知県立高知工業高等学校を訪問。未来のエンジニアである生徒たち約700人に向け、エールを送った。

今回の訪問は、マツダ側からの提案により実現したもの。キャリア教育講演会として、山本主査が「夢なきもの歓びなし」と題した講演を開催。自身の生い立ちから、ロータリーエンジンとの出会い、東洋工業(現マツダ)への憧れや在学時・入社後に努力したことなどを通じて、生徒たちに「夢を持つことの大切さ」を語った。

「山本先輩」として紹介された山本主査は、「元気しちょるかい!」と挨拶。元気いっぱいに生徒たちが答えると、「40年経っても覚えてるものですね」と生徒たちの手拍子に合わせて校歌を披露。「土佐清水に生まれ、これまで沢山のことを経験してきました。僕の思い出話が、皆さんのこれからの参考になれば」と講演をはじめ、生徒たちは真剣なまなざしを向けながら耳を傾けた。

冒頭では生い立ちについて紹介。1955年、土佐清水の農家に生まれた山本主査は、エンジニアとなるに至った「原体験」として、家にあった農具や近所のお兄さんが乗っていたオートバイを挙げた。当時、子どもだった山本主査はオートバイのタンクに乗せてもらい、顔に当たる風の気持ち良さ、楽しさを味わったのだという。「今、こうしてオープンカーを作っている。そういうの(影響)もあるのかな」と語った。

東洋工業、そしてエンジニアという職業を意識するきっかけは中学2年生の頃に触れたロータリーエンジンだった。『ファミリア ロータリークーペ』に出会った山本主査は「見た目は普通なのに、とても馬力があるクルマで、良く走った。これを見て、大きくなったら東洋工業に入社して、ロータリーエンジンを作りたいと、はっきりと思ったんです」。その想いは実を結び、1973年に東洋工業に入社、ロータリーエンジンの先行開発や、レーシングエンジン開発、今も名車と謳われる『RX-7』の開発主査などをつとめあげた。

「皆さんは15歳から17歳ですが、振り返ってみればすでに心の中に、自分を変える出会いがあるんじゃないかと思います。まずは興味、好奇心を持ってほしい。恋い焦がれてほしいと思います。そして自分に合ったものが見つかった時、それが好きになるんです」(山本主査)

1990年、ロータリーエンジン搭載車でルマン24時間耐久レースに出場する際には「あと100馬力あれば勝てる」という現場からの要望があった。「とても出来ないことだけど、『やろう』と」と山本主査。しかし、目標を立て地道な努力を続けた結果、その年に成果は出なかったものの翌年、日本車として初めて総合優勝を勝ち取った。「マツダとしてルマンに参戦して19年。文字通り、全員の力を結集して、大きな目標を達成することができた」として、チームの大切さ、目標を設定することの重要性を説く。高校時代はサッカー部でインターハイや国体にも出場したという山本主査は「部活でも、会社に入っても、みんながひとりひとりのポジションで努力するのは同じ。それはクルマ作りでも全く変わらない」と語った。

「我々は、機械を作っているんじゃない。人の心を動かすものを作っているんです。そして決してひとりじゃない。新型ロードスターは『共創』をコンセプトに掲げています。愛してくれるユーザーの皆さん、そして開発者、ひとりひとりみんなでロードスターというクルマを作っていくんです。ロードスターのコンセプトを工場の方々に見せた時、『これはできないよ』と言われました。だけど、難しいものを作るからこそ、皆さんが喜んでくれる。そして工場ではなく工房からみんなの『作品』を届けましょうよ、と話しました。みんなのハートに火がついたんです」(山本主査)。そして新型ロードスターは誕生した。

「失敗を恐れずに、と言うのは簡単ですが、決してひとりじゃないということを覚えておいて下さい。そして、誰かの役に立つ、人の人生を変えるような仕事をしてほしいと思います。それが情熱や誇りにつながります。小さな夢、小さな目標でも良いです。しっかりそれを持って、取り組んでいってほしい」と講演を締めくくった。

講演後、屋外に展示された新型ロードスターのまわりには生徒たちが押し寄せ、しきりに「山本先輩」に質問を投げかける姿が見られた。一年生の男子生徒は「無理に見えることでも、目標を立てることで乗り越えられるというお話が良かった。自動車メーカーに入りたいと思っていたけど、マツダに決めました」と話す。さっそく未来のマツダを背負う人材の発掘に成功したようだ。ロードスター、そしてマツダの共創の輪がどこまで広がって行くか、その可能性を感じられるイベントとなった。

《宮崎壮人》

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