神奈川県が従業員やその家族の健康マネージメントを企業に促進する「CHO(健康管理最高責任者)構想」を推進している。これは従業員の健康管理を企業経営の一部と位置づけするいわゆる「健康経営」を、県内の企業に浸透させていこうとするもの。今回、同構想に参加する昭特製作所に、社員の健康管理への取り組みについて話を聞いてみた。
神奈川県川崎市に本社を持つ昭特製作所は、昭和19年創業の精密機械をはじめとした機械製作企業。従業員は432名(平成27年6月現在)で、本社の他に宮城県仙台市、広島県福山市などに事業所をおく。放送局などで使われる業務用放送カメラを支えるペデスタル(操作台)、クレーンなどの放送機器アクセサリーでは業界シェアトップの実績を誇るほか、工業材料の強度や特性を調べるための「試験片」製造でも知られた企業だ。
■生活習慣病対策としてプロジェクトチーム発足
総務部長の都築正彦氏によると、「毎年行っている社員の健康診断で、生活習慣病や高血圧による再検査者が年々増えているのがわかりました」とのこと。この再検査増加に対する対策を考えているなかで、副社長の呼びかけで昨年4月から会社として健康管理に取り組むことになったという。
具体的には副社長や都築部長などの経営陣、管理職者、若手社員を交えたプロジェクトチームを発足。生活習慣病に対する対策を急務と考え、スポーツ推進を図ったという。
「例えば、社内に以前からあったものの、あまり活動していなかった『屋上クラブ』を充実させました。ベンチプレスなどを用意し、社屋の屋上でフィットネスやスポーツを行うように図ったのです」
今では昼休みになると、社員がバレーボールやテニスなどに興じるようになったという。他にも、バレーボール、野球、バドミントンなどの社内サークル活動費を従来より倍増し、活動を活発化。ワークライフバランスの充実という意味で、ダーツや釣りといったサークルにも同様に活動費を倍増したという。会社が率先して「体を動かそう!」と社員に促しているわけだ。
「また、『フィットネスクラブ』という社内サークルを設立しました。サークル部員には本社近隣のフィットネスクラブの会員権を貸与して、アスレチックジムやプールなどを無料で利用できるようにしています」
■コンテストや社食メニューで体質改善目指す
同社ではこういったスポーツによる健康増進のほかにも、昨年から「健康づくりコンテスト」を実施している。これは自身で目標体重、体脂肪率を設定し、半年間でどれだけ目標を達成できたかを競うコンテスト。優勝者には会社から希望の記念品(今回はランニングシューズだったという)が贈呈される。
これらスポーツ系サークルの拡充やコンテストなど健康に関する施策は、前述のプロジェクトチームから発案されて実施されたもの。若手から経営陣まで全社で「体を動かす」ことへの取り組みが具体化したものだ。生活習慣病対策として、スポーツを積極的に導入している同社の姿勢がうかがえる施策となっている。
また、社員食堂ではヘルシーメニューデーを設置。体質改善のため、肉を排除したメニューを提供している。一方で毎週水曜日は健康増進のための完全定時退社デーとし、定時退社で健康に時間を割くよう促しているとのこと。「必ずしも体を動かしている社員ばかりではないようですが(笑)」と都築氏は笑いながら話すが、会社が社員の健康に留意していることを伝える一助となっているようだ。
都築氏は「健康=明るい職場=正しい仕事」と語る。社員の健康を会社が真剣に考えていることを伝え、そして具体的に行うことで仕事の効率も上がっていく。今後は神奈川県が推進する「CHO構想」に参加したことで、より効率的な健康経営を目指していくようだ。