【SUPER GT】脇阪寿一監督「表彰式の景色はたぶん日本で最もルマンに近い」…鈴鹿1000km直前インタビュー後編

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脇阪寿一監督
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インタビュー前編ではSUPER GTというシリーズの面白さ、そして大いなる未来への可能性について語ってくれた“ミスターSUPER GT”脇阪寿一監督(LEXUS TEAM LEMANS WAKO'S)。後編では目前に迫る第6戦「鈴鹿1000km」の魅力や展望について訊く。

鈴鹿1000kmレースは今年で45回目。第1回大会は1966年で、休止期も挟むとはいえ、その歴史は半世紀に及ぶ。90年代に全日本GT選手権(JGTC)として発足したSUPER GTシリーズよりもはるかに深く、長い伝統を有する夏の風物詩的な一戦である。

鈴鹿1000kmがSUPER GTのシリーズ戦となったのは2006年が最初(以降、距離が1000kmではない時期も含みシリーズ戦に定着)。それ以前にもJGTC~SUPER GTのマシンが鈴鹿1000kmに出走することはあり、脇阪監督もドライバーとして参戦、シリーズ戦化する前に2勝、そしてシリーズ戦化した後も07年に優勝と、この伝統の一戦で計3勝を挙げている。

◆ウイナーズリストに名を刻んで分かる、歴史の重み

----:鈴鹿1000kmというレースについての思いには、どのようなものがありますか。

脇阪寿一監督(以下、敬称略):まず、これだけ続いているというのが凄いことですよね。僕もそうでしたけど、これから鈴鹿1000kmを勝って名前を刻んでいく若い選手たちも、勝って、このレースの歴史を実感していくんだと思います。それと、あの表彰式の景色を(表彰台の頂点から)見させてもらって思うのは、たぶん日本で一番ルマンの表彰式に近いそれなんじゃないかっていうことです。

----:実際のゴール時刻や天候にもよりますが、夕闇のなかで花火が上がって、あれだけの数の観客のみなさんが表彰台の下に集まる鈴鹿1000kmのフィナーレは、確かにスペシャルなものですよね。そして長距離戦ならではの部分も含め、ドラマチックな展開も多い。07年、当時TOM'Sの脇阪寿一&アンドレ・ロッテラー&オリバー・ジャービス組の終盤逆転勝利は今も語り草です。

脇阪:ああいうドラマがドライバーのイメージをつくるところもあって、もちろん(逆転の立役者)アンドレは既に素晴らしいトップドライバーでしたが、あのレースがあったことで、よりアンドレのイメージが上がっていくきっかけになったと思います。

----:ロッテラー選手はその後、国際舞台にも飛躍し、今やルマン24時間レース総合優勝3度の実績を誇る、世界でも指折りの存在になりました。

脇阪:鈴鹿1000kmが注目されるレースだということでもありますし、走りの個性も出るレースだと思います。今も我々トヨタ/レクサスにはたくさんの優秀なドライバーがいますが、高いレベルで揃っているなかから、ひとつポンと上にいく、そういうチャンスがあるレースなんですから、(自分が監督を務めるLEXUS TEAM LEMANS WAKO'Sの)大嶋和也、アンドレア・カルダレッリの両選手にも頑張ってほしいですね。

3メーカー三つ巴の楽しいレースを期待

監督として臨む、初めての鈴鹿1000km。大嶋選手とカルダレッリ選手、そしてTEAM LAMANSのスタッフたちとともに戦う今季第6戦(実質5戦目)に、脇阪監督はどう挑もうとしているのか。チーム監督の枠にはとどまらないレクサス勢全体についての観測も交えつつ、語ってもらった。

----:今年の鈴鹿1000km、カーナンバー 6「WAKO'S 4CR RC F」としてはどういう目標をもって戦うのでしょうか。

脇阪:お祭り的なところもあるレースですし、日本で最も派手なレースということもできるかもしれませんから、ここで目立ってファンにアピールしたい、と思うところは当然ありますよね。ポイントが大きい(通常は優勝20点だが、鈴鹿1000kmは25点)レースでもあるので、ここを狙ってのシーズン全体の戦略みたいなものを(開幕当初から)意識して戦うやり方もあるんですが、今年の我々はチームを成長させるシーズンとして一戦一戦を精一杯やってきています。

----:今回もそういったスタンスの延長になる。

脇阪:GT500クラスに関しては今、あのスピード領域で、しかもチャレンジングな鈴鹿サーキットを完全なスプリント、全開で1000km、6時間弱走るわけですから、いろんなことがあるでしょう。そこをきっちりコントロールしていって、できるだけ上位でゴールしたいですね。表彰台に上がれたら万々歳だと思います。

----:ピットストップも多いレースになります(今年は規定で、ドライバー交代を伴うピットストップ5回以上が原則的に義務付けられる)。

脇阪:それだけミスの可能性も増えますし、これまで起こっていなかったことが起きるかもしれない。1回につき3秒ロスしていたら、それが今回は15秒になってしまう。ですからチームの皆とは、ミスなく着実にレースすることを意識して戦いましょう、ただ本当に完璧というのは(誰にとっても)難しいだろうから、そこで起きたことは今後チームの成長につなげられるように、そういう鈴鹿1000kmにしようということを話しています。

----:レクサス勢として見た場合には、日産の連勝(開幕4連勝中)を止めないといけません。

脇阪:現状、今のレギュレーション的な要素の影響も含め、マシンのポテンシャルで日産が強いのは事実だと思います。でも、レクサスとしては過去2年、鈴鹿1000kmではTOM'Sが連勝していますし、去年まで僕がドライバーとして走っていたLEXUS TEAM WedsSport BANDOH(#19)も昨年の鈴鹿1000kmではいい内容だったと思っています。それに19号車は最近もすごくいいですよね。あそこのドライバーふたり、関口雄飛と国本雄資は今年スーパーフォーミュラでも速いですし、僕のトレーニング仲間でもあるので個人的には注目しています。

----:レクサス勢にも充分チャンスあり、ということですね。

脇阪:苦労している面もありますが、エンジンも頑張ってくれていますし、あとは各チームのエンジニアリング力とドライバーの成長というところで日産勢と戦っていきたい。ホンダも調子が良くなってきていますから、三つ巴で楽しいレースになればいいかな、と思っています。

SUPER GT第6戦「第45回インターナショナル鈴鹿1000kmレース」は8月27日に公式予選、28日に決勝というスケジュールでの開催となる。27日の夜には脇阪監督もトークショーやデモラン(JGTC時代の愛機スープラに搭乗)に出演予定の前夜祭があるなど、今年も通常ラウンド以上の盛り上がりを見せることは間違いないだろう。

《遠藤俊幸》

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