『ゴルフ』のスポーツバージョン『ゴルフGTI』は今年で40周年を迎えた。それを記念して登場した限定モデルが「クラブスポーツ」だ。
クラブスポーツはまず5月にトラックエディションが発売され、続いて8月にストリートエディションが発売された。このネーミングを見るとトラックエディションがサーキットバージョン、ストリートエディションがロードバージョンで大きく異なるモデルだと思いがちだが、両車のパワースペックなどには差はなく、トラックエディションのほうがフロントシートがよりサポート性の高いものとなり、タイヤがトラックエディションが19インチ、ストリートエディションが18インチになるなどの違いだ。
袖ヶ浦フォレストレースウエイでの試乗では、両車ともにサーキットを満喫できるクルマに仕上がっていることが確認できた。2リットルの4気筒ターボエンジンのパワーは通常状態で265馬力、アクセルペダルを強く踏み込むと約10秒間だけ290馬力のパワーを発するという機構が組み込まれている。
発進からの加速感は力強く気持ちいいものだが、それ以上に中低速からの力強さは魅力的だ。コーナーに飛び込んで減速後、3000回転程度までエンジン回転数が落ちても、アクセルをグイッと踏み込んでやれば、エンジンはストレスなく7000回転まで上昇しつつ力強い加速を行う。
足まわりはかなり硬め。今のトレンドとしてはサスペンションをしっかりと動かして、タイヤをグリップさせていくといったものが多いが、ゴルフGTIクラブスポーツはガシッと硬めた足まわりで、路面をガシッとつかんで走っていくというもの。サーキットを走るうえではこちらセッティングのほうが安心感が高い。グリップのいい路面でサスペションが柔らかめだと、どうしてもロールが大きくなり、それが原因で心がくじけそうになる。
ミッションはデュアルクラッチ式のATモード付き2ペダルMTのDSG。コーナーに向かってガツンと強いブレーキを踏み、パドル操作をしてシフトダウン、そして加速に移るという一連の動きでの使いやすさはバツグンにいい。アクセル、ブレーキ、どちらのペダルもタッチ、ストロークがちょうどよくクルマをコントロールしやすい。
じつはトラックエディションについては、後日一般道で試乗する機会に恵まれた。公道では硬めの足が辛いかと思いきや、意外なほどに楽な印象。もちろん硬いには硬いのだが、225/35R19というタイヤとの組み合わせならばけっこういけるといえる。もちろん、継ぎ目の多い道などでは、ボディを震わせるようなこともあったのだが、ある程度路面が整備されていればかえって気持ちいい走りができるセッティングであった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。