【日産 セレナ & ホンダ ステップワゴン 比較試乗】乗り心地 vs 走りの爽快感、どっちを選ぶ?

試乗記 国産車
日産セレナ新型(左)とホンダステップワゴン(右)を比較試乗
日産セレナ新型(左)とホンダステップワゴン(右)を比較試乗 全 40 枚 拡大写真

日産の新型『セレナ』の大きな特徴として挙げられるのが「デュアルバックドア」だ。

通常、Mクラスボックス型ミニバンのバックドアは巨大で、開けると大きなひさしになるのと引き換えに、車体後方に約1mものスペースが必要。それを解決したのがデュアルバックドアで、樹脂製ハーフバックドアのみ開けることで、車体後方に必要なスペースは約48cmになり、狭い場所でも荷物の出し入れが可能になる。

そうしたバックドアの仕掛けに先鞭をつけたボックス型ミニバンがホンダ『ステップワゴン』 。わくわくゲートと呼ばれるリヤバンパー下から開くバックドアは、何と縦、横に 開き、横開きするサブドアは3段階に開閉でき、その際の車体後方に必要なスペースは40/64/76cm。サブドアは内側にもオープナーがあり、人や犬が乗降できる楽しさ、実用性もある。

ここではそんなバックドアに特徴ある新型セレナとステップワゴンの走りを比較してみたい。

◆燃費と扱いやすさを重視したセレナのエンジン

新型セレナを発進させると、先代よりも穏やかな印象。これは17.2km/リットル というクラス最高燃費性能を実現するためスロットル制御をあえて燃費重視にしているから。中間加速、フル加速時も同様の印象だ。

キャリーオーバーされた2リットルエンジン(細部は変更されている)は性能的に燃費と扱いやすさを重視。巡行状態になればファミリーミニバンとして不足ない性能、加速力を発揮してくれるが、先を急ぐときには少々、歯がゆさを感じるかも知れない。巡行中の静かさはホイールハウスの内側に吸音ライナーを貼るなどのこだわりがあり、なかなかのレベルだが、エンジンの回転フィールはややザラつきがあり、回して気持ちいいユニットではない。

対するステップワゴンのパワーユニットは税金的にもメリットある1.5リットルのダウンサイジングターボ。JC08モード燃費は新型セレナの17.2km/リットルに 対して17.0km/リットル。

Mクラスボックス型ミニバンに1.5リットルで大丈夫か? と思うかもしれないが 、実は平たん路で2リットル、1400~2000回転では2.4リットル並のトルク、 加速力を発揮する好ユニットだ。しかもエンジンは出足からレスポンスに優れ、実に爽やかに軽快に伸びやかに回り、静か。高速走行でも余裕があり、エンジンで選ぶならこちら、ステップワゴンである。

さらにブレーキフィールもステップワゴンに軍配が上がる。新型セレナのブレーキに不満があるわけではないが、ステップワゴンの吸いつくようなペダルフィール、コントローラブルな制動性能がこのクラスでは突出している…そんな印象なのである。

◆乗り心地比較

ファミリーミニバンとして重要項目の乗り心地はどうか。この点に関して両車の各グレードで採点すると、1.セレナ ハイウェイスター、2.ステップワゴン標準車、3.セレナ標準車、4.ステップワゴンスパーダ…という順位になる。

つまり、新型セレナの16インチタイヤを履くハイウェイスターがベスト。コストのかかった専用サスペンションは標準車よりむしろ乗り心地重視の設定で、特に荒れた路面、段差でのショック、振動吸収、減衰性能に優れ、また、超ロングスライド仕様の2列目席にありがちな、シートの微振動を背もたれに振動減衰用ダンパーを装着するなどして見事に抑えている。

ステップワゴンは16/17インチタイヤを履くスパーダだと乗り心地はファミリーミニバンとしてはやや硬め。ホンダらしく、操縦安定性を追求した仕様となる(より前後バランスがいいのはスパーダ・クールスピリッツの17インチタイヤ仕様)。良路では快適だが、荒れた路面、段差でのショックはそれなりだ。

とはいえ、ステップワゴンでお薦めの標準車の乗り心地は極めて快適。しなやかにして身も心も軽くなるような軽やかなタッチが心地良い。ただ、超ロングスライド機構を持たない2列目席は、荒れた路面での微振動が気になるシーンもある(ノア& ヴォクシーも)。

◆乗り心地の良さ vs 走りの爽快感

全高、重心が高いボックス型ミニバンはカーブや山道での操縦性、安定感確保が、 各車の勝負どころ。先代セレナはその点でユーザーの不満があったというが、新型セレナは軽めの操舵力を持つステアリングを切ったときのスムーズさ、応答性が高まったと同時に、ロール感、安定感もまた飛躍的に高まり、実に安心してカーブ、山道を走ることができる。いつものカーブをより高い速度で曲がっても大丈夫。運転がうまくなったと錯覚できるほどである。

一方、ステップワゴンはハイペースになればなるほど走りが際立ってくる。16インチタイヤ&標準サスペンションの標準車でもリニアなステアリングフィール、自然なロール感が好ましく、ボックス型の車体を大げさに言えば意のままに操れる感覚がある。また、専用サスペンション&17インチタイヤを奢るスパーダ・クールスピリッツは誰もが安心して楽しめるスポーティー感覚ある走りを、安心感とともに痛快、爽快に味わせてくれるから運転が楽しい。

すでに報告したエンジン、ブレーキの良さもあって、こと走りで選ぶならステップワゴンと言いたくなる。

新型セレナは先代も同様だが、走りに突出した部分がない代わりに、ファミリーミニバンとしてふさわしい乗り心地が自慢。プロパイロットやハンズフリーオートスライドドア、デュアルバックドア、3列目席パワースライドドア開閉スイッチといった先進性、実用性に富む装備を満載しているところに魅力がある。

どちらが“わが家”に向いているかは、このクラスのミニバンに何を最優先で望むかで決まると思う。ちなみに犬を乗せやすいのは、スライドドア部分、ラゲッジ部分のフロアがより低いステップワゴンのほうだ。両手に荷物、犬を引いている状態でスライドドアから犬を乗せやすいのは、ハイウェイスターのハンズフリーオートスライドドア仕様車だろう。

■5つ星評価
「セレナ ハイウェイスター」
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
ペットフレンドリー度:★★★★

「ステップワゴン 標準車」
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
ペットフレンドリー度:★★★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との快適・安心自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ムック本「愛犬と乗るクルマ」(交通タイムス社刊)好評発売中。

《青山尚暉》

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