今年で20回目を数えるクラシックカーの祭典La Festa Mille Migliaが今年10月14日に明治神宮をスタートし、新潟、長野、山梨、静岡、神奈川を通過し、10月17日にゴールする行程で開催されている。
10月15日、全行程の2日目は新潟県湯沢町をスタートし、上越を経由し、信州の斑尾、志賀高原を抜けて長野を経由し軽井沢までを走るというコースが設定された。いよいよ秋本番、そんな信濃路を中心にしたコースである。開湯1300年とも言われる長野県山ノ内町の渋温泉にも、昼過ぎに、時代を超えた世界の名車たちが、沿道でギャラリーが声援を送る中駆け抜けた。
1927年にイタリアで始まったレースMille Miglia 。当時は世界最高峰の過酷で高度な戦いが繰り広げられた自動車レース、現在の高い自動車技術のベースがここで培われた功績はとても大きい。大きな事故がきっかけでいったんは中止になったが、現在では「走る博物館」と言われることもあるクラシックカーレースとして、かつてと同様、ブレシアをスタートしてローマを経由しブレシアに戻る1600キロの壮大なイベントが毎年開催されており、すっかり風物詩となっている。
日本ではその伝統と精神を受け継いで、1997年に「La Festa Mille Miglia」としてスタート。現在日本で唯一のFIVA(国際クラシックカー連盟)公認の国際格式のクラシックカーラリーとして開催されている。
古くは江戸から善光寺へ向かう草津道の要路に位置する渋温泉は大変に重要視されてきた。自動車が走ることを想定していない狭い幅の石畳の道の両脇には、永くこの地を訪れる人から愛され続けてきた宿の数々が軒を連ねる。一番新しいものでも半世紀ほどの歳月を生きてきたクラシックカーの数々。沿道で小さな子供から年配の人まで大勢の人たちが手を振る中、やはりこの地を走るなどとは製造時誰も想像しなかったであろうクルマたちが走り、「千と千尋の神隠し」の湯屋のモデルにもなったとされ、国の登録有形文化財にも指定される、金具屋斉月楼の前に設けられたチェックポイントでチェックを受けていた。
もちろん伝統や文化的背景に敬意を表して、オーナーが惜しみなく注いできた愛情のたまものである、勇壮で優雅なその姿を披露する場として、このイベントの果たす意義は大きい。しかし、エントラントとギャラリー、エントラントと、通過地点である渋温泉の人たちとのコミュニケーション。さらには時代や洋の東西というかつては共存することが難しかったかもしれない夢のコラボレーションを目の当たりにできることもこのイベントの醍醐味である。
「少しでもイタリアのミッレミリアに近づけているでしょうか。この雰囲気を気に入っていただければよいのですが。ぜひここでしか見ることのできない光景を見に前泊でお越しになってはいかがでしょうか」チェックポイントで参加車両たちを待つ関係者も語ってくれた。渋温泉の一部になっているようである。