福岡市内で大規模な道路陥没…地下鉄工事が原因か

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七隈線博多駅工区の平面図。陥没事故が発生した場所(赤枠)では、隣接する工区のシールドマシンを折り返すための大きな空間を設ける工事が進められていた。
七隈線博多駅工区の平面図。陥没事故が発生した場所(赤枠)では、隣接する工区のシールドマシンを折り返すための大きな空間を設ける工事が進められていた。 全 3 枚 拡大写真

福岡市博多区の博多駅前2丁目交差点付近で11月8日、道路の大規模な陥没事故が発生した。陥没した道路の下では市営地下鉄のトンネル建設工事が行われており、福岡市はこの工事が原因で陥没したとの見方を強めている。

福岡市交通局の発表などによると、5時頃、道路下で工事中だった地下鉄七隈線のトンネル内で出水を確認。上の道路を通行止めにした直後の5時15分頃、博多駅前2丁目交差点の西側で道路の2カ所が陥没した。7時25分頃には2カ所の陥没部分がつながり、幅約27m、長さ約30m、深さ約15mの大きな穴ができあがった。この影響で陥没した部分を含む付近の道路が通行止めになったほか、停電や断水などの被害が発生した。

陥没した道路の下には、福岡市交通局が建設を進めている地下鉄七隈線の博多駅(仮称)工区がある。博多駅工区は全長約280mで、JR博多駅に近い工区の東方は、上から下に掘り進めてトンネル構造物を構築する開削方法などを採用。これに対して西方は新オーストリア工法(NATM)を採用している。

NATMは土や岩による圧力(地圧)が高い場所で用いる工法の一つ。掘削後、すぐに壁をコンクリートで吹き付け、トンネルの中心部から放射状にロックボルトを打ち込んでトンネルを構築していく。コンクリートとロックボルトによって、トンネルの壁と土や岩が一体化し、トンネルを支える強度を生み出す。

1960年代にオーストリアで開発された工法で、1970年代以降は日本でもNATMによるトンネルが建設されるようになった。岩盤が硬い山岳地帯のトンネルで採用されることが多かったが、最近は都市部のトンネルでも他の工法と併用して採用する例が増えた。

陥没事故が発生した場所はNATMを採用した部分の西端で、中間駅(仮称)東工区と隣接している。中間駅東工区では単線トンネルを2本構築することになっており、シールドマシンを使って横に掘り進むシールド工法を採用。まず中間駅方面からシールドマシンで博多駅方面へ掘り進んで単線トンネルを1本構築し、博多駅工区に到達したところでシールドマシンを折り返し、今度は中間駅方面へ向かって単線トンネルをもう1本掘削することになっている。

陥没事故が発生した博多駅工区の西端では、シールドマシンを折り返すための大きな空間を確保する必要があったため、NATMでトンネルを拡大する工事が行われていた。

七隈線は、橋本~天神南間の12.0kmを結ぶ福岡市の地下鉄。1996年12月から工事が始まり、2005年2月に開業した。続いて2012年6月には、福岡市が七隈線の延伸区間として天神南~博多間の鉄道事業許可を取得。2013年4月の工事施行認可を経て2014年2月に起工式が行われた。開業は2020年度を予定している。

七隈線の延伸工事では、2014年10月に博多警察署入口交差点付近で道路の陥没事故が発生している。2005年に開業した区間でも工事中に陥没事故が発生しており、2000年6月に城東橋西交差点付近の道路が陥没した。

《草町義和》

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