JR北海道が進めてきた「社員研修センター」の移転がまもなく完了する。完成した建物の一部は既に使用を開始しており、4月中には全ての施設の使用を開始する予定。一連の事故や不祥事を受け、研修機能の強化を図る。
同社が1月12日に発表したところによると、函館本線苗穂駅の北西側にある現在の研修センター(札幌市東区)は、建築から約50年が経過して老朽化。さらに、苗穂駅周辺の再開発事業で建物の一部が支障することから移転が計画された。新しい建物は2016年11月30日に完成し、一部は今年1月4日から使用を開始。2月には移転を完了する予定だ。
新しい研修センターは、手稲区内にある函館本線稲穂駅と札幌運転所の近く。稲穂駅の北西側に実習棟と研修棟、宿泊棟が整備された。運転シミュレーターの増設や天井クレーンの設置など、研修機能の強化が図られている。
実習棟の一部には「安全研修館」を整備。石勝線の脱線火災事故など一連の事故の現物を展示して「事故当時の状況をリアルに体感」させる。さらに、事故の写真や関係者へのインタビュー映像なども使用。研修を通じて事故を「自分事化」させるという。
このほか、札幌運転所の北側に全長697mの実習線を整備する工事が行われており、4月の完成を予定している。分岐器(ポイント)や信号、ホームなどを設置し、信号故障時に列車を運転する場合の取り扱いなど、実際のケースに即した訓練を行えるようにする。訓練用の車両や保守用の車両も配備し、連結作業などの訓練にも対応する。
JR北海道は2011年5月、石勝線で特急『スーパーおおぞら14号』の脱線火災事故が発生。その後も脱線事故や出火事故が相次いだほか、レール検査データの改ざんなどの不祥事も発覚し、現在の経営悪化の一因となっている。