テスラのオートパイロットは“ベータ版”である、ということ【テスラ モデルY 買いました 11】

テスラの“ベータ版”オートパイロットをいろいろ試してみた
テスラの“ベータ版”オートパイロットをいろいろ試してみた全 6 枚

テスラ『モデルY』が発売されたと同時にとっさにポチッてしまった一編集者である筆者。最新のクルマはテレビCMで流されている日産のプロパイロットを代表とする運転補助機能がオプションで用意されているものもあるが、テスラには標準で運転補助機能が付いている。その補助具合を確かめてみよう。

自動運転“前夜”のオートパイロット機能

テスラに付いている運転補助機能は「オートパイロット」と言うもので特長の1つだ。これはドライバーの運転負荷を低減するためのもので、“自動車線変更”、“オートパーキング”など機能はいくつもあるのだが標準で装備されている機能は以下の2つだ。

・トラフィックアウェア クルーズコントロール
・オートステアリング

このどちらの機能も“ベータ版”とのこと。まだ完全なものではないということに留意しなければならない。つまりは、完全に信用するな、注意して利用せよ、ということなのだろう。

スクリーンの表示スクリーンの表示

「トラフィックアウェア クルーズコントロール」とは同じ車線上を走っている前方の車両を検出し、前方車両との車間距離が一定に保たれるようにするもの。マニュアルには「高速道路など、乾燥した直線道路の走行を想定して設計」されているそうだが、これがまた便利なのだ。

これらの自動車専用道路でも渋滞することがあるが、「トラフィックアウェア クルーズコントロール」を設定しておくと、前方の車両が渋滞で速度を落とし停車したとしても、それに追随して自動的に速度を落とし、停車してくれる。それどころか、前方車両が動き出すと自動的にテスラも動き出すのだ。この間、アクセルもブレーキにも足は触れない。すべてが自動なのである。

これがどれほどドライバーの負担を減らすのか、いままで体験したことがなかったのでわからなかったが、相当な負担低減であり快適だと強く感じる。いまやこの機能がついていないクルマには乗れない気がするほどだ。この設定は、運転中に右レバーを1回、下方向に押すだけで完了する。

ただ、ある程度の速度で走っているときでないとうまく設定できない。渋滞になってから設定しようとしてもできないことが多い。設定できるときは、ディスプレーに設定できるグレーのハンドルマークが表示されるので、それを目当てにすると良い。

スクリーン最上部右側に表示されるグレーのハンドルマークスクリーン最上部右側に表示されるグレーのハンドルマーク

「オートステアリング」は、「トラフィックアウェア クルーズコントロール」に加え、走行車線を維持する機能だ。これは、運転中に右レバーを2回連続して、下方向に押して設定する。設定されると前述のハンドルマークが青色に変わる。

ハンドルマークが青色に変わり、車線両側の白線が青色になるハンドルマークが青色に変わり、車線両側の白線が青色になる

オートステアリング中は意図してハンドル操作を行う必要はない。ハンドル操作は必要ないがハンドルから手を離すことはできない。両手をハンドルに置いたままでも警告が出てしまうので、なかなか操作が難しい。いや、操作しなくてもいいのだが、両手を置いたままだと「ハンドルを少し回してください」と警告メッセージが出る。マニュアルには

オートステアリングは、ハンドルを回したときの軽い抵抗や、ハンドルをわずかに(ハンドル制御が切り替わらない程度に)回す動作から運転者の手を検知します。

とあるので、メッセージが出たら、ハンドルを軽く左右に動かす。このとき“軽く”動かさないとオートステアリングが解除されるので、その塩梅がなかなか難しい。何回か利用してみてわかったのは、左右のどちらかの手で軽く下方向に負荷をかけているとメッセージが出にくいようだ。

スクリーン上部が青みがかってメッセージが表示されるスクリーン上部が青みがかってメッセージが表示される

しかしながら、使い慣れるとオートパイロットも便利なもの。ちなみに「オートステアリングは、注意力の高いドライバーが進入制限された高速道路などを走行するときに使用することを前提として」いるそうなので、街中の道路で利用できるものではない。とはいえ、自動運転時代が到来すれば、アクセルもブレーキも踏まずハンドルから手を離したままでクルマが自動で目的にまで連れて行ってくれるという快適さの片鱗は感じることができる。

突然のブレーキには慣れが必要

「オートステアリング」も「トラフィックアウェア クルーズコントロール」も“ベータ版”なので、ときどき思わぬ挙動に遭遇することがある。例えば、左車線が工事中のとき、いきなりブレーキがかかることがある。最初にこの事象に遭遇したときは驚いた。また、車線の左側を走るバイクを追い越そうとするとき、急にバイクを感知してアラームが鳴りブレーキがかかることもある。

このとき身体はすぐさま反応し、手はハンドルを強く握りしめ、足もアクセルを踏んで、この状態を回避したのだが突然のことで“肝を冷やした”という表現が適切だと思う。そうでなくてもときどきではあるが、予期しない状態で突然ハンドルを左に切ろうとすることもあった。そういうときもハンドルを強く握るとオートステアリングが切れる。原因として心当たりがあるのが道路左側の白線が消えかかっていたこと。こういうのに反応しているのかもしれない。

このあたり、安全性を疑いたくもなるのだが“ベータ版”ということで自分で回避するしかない。国産自動車ではありえない挙動だとも思う。だが慣れればなんとなくではあるが事前に挙動がわかるので、いまでは、左手に工事現場やバイクがいるときはアクセルを軽く踏んで、避けるように軽くハンドルを右に切れば、ブレーキがかかることもなく通り過ぎることができることもわかった。

人間よりも正確な走行位置

また、高速道路でオートステアリング中、右車線を走っているとゆるやかなカーブを曲がるときに中央分離帯に当たりそうなほど右に寄っている感覚があり、怖くなって左にハンドルを切ることが何度かあった。そのときオートステアリングは切れてしまう。しかし何度か経験し、よく見ていると、普段自分の感覚では、左車線を走るときは右寄りに、右車線を走るときは左寄りに走っていることがわかった。自然と端に近づきすぎないようにしているのだ。これがオートステアリング中のテスラは自動的に左右の白線を感知して車線のセンターを走っているので、自分の感覚では逆方向に寄っているように感じていたのだとわかった。

それがわかるとだんだん慣れてきて、テスラを信用するようになってくる。ギリギリの端を走っていると思ってもスクリーンにはセンターを走っているテスラを確認できるので安心するようにしているが、いつなにが起こっても回避できるようにハンドルから手を外すことはない。

さて、便利なオートパイロットだが、これらは基本的に左右のフロントフェンダー、フロントとリアのウインドウの間のピラー、バックミラーあたりに3台、計7個のカメラで判断して機能している。納車時にもらった案内に「キャリブレーション完了後にオートパイロットを使用できます。約32~40kmほど走行する必要があります」とあるので、その間に学習していたのだろう。これは最初だけなのでそれ以降意識することはない。最初はスクリーンに映るものが少ないのだが、だんだんと他のクルマやトラック、バイク、人の姿に自転車までもがスクリーンに表示されていく。すべてカメラで感知しているので、カメラの汚れには気を付けたい。

フロントガラス上部にある3つのカメラフロントガラス上部にある3つのカメラ

オートパイロットのその他の機能には、運転席に乗らずにテスラを動かせる「サモン」や「オートレーンチェンジ」、「オートパーキング」などがあるが、これらは現在オプションで43万6000円のエンハンスト オートパイロット(EAP)を追加しなければ機能しない。ただし、現状「オートパーキング」は機能していないらしく、また、信号を認識して自動停止する機能などもアップデートで対応することになっている。

ソフトウエアのアップデートもテスラの特徴の一つなので、次回以降、アップデートの機能についてもご紹介していきたい。

田代真人
福岡県出身。九州大学工学部卒業後、朝日新聞社入社。その後、学習研究社にてファッション女性誌編集者、ダイヤモンド社にて初代Webマスター、雑誌編集長、書籍編集などを経て独立。出版&電子出版、Webプロデューサー、PRコンサルタントとして活動後、現在は、駒沢女子大学教授、桜美林大学非常勤講師を務める。専門は「編集論」。

《田代真人》

田代真人

田代真人 福岡県出身。九州大学工学部卒業後、朝日新聞社入社。その後、学習研究社にてファッション女性誌編集者、ダイヤモンド社にて初代Webマスター、雑誌編集長、書籍編集などを経て独立。出版&電子出版、Webプロデューサー、PRコンサルタントとして活動後、現在は、駒沢女子大学教授、桜美林大学非常勤講師を務める。専門は「編集論」。

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