ダイハツのAIリスキリングはボトムアップからトップダウンに…NVIDIA GTC 2023

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NVIDIA主宰のプライベートカンファレンス「GTC 2023」のJapan AI Dayにおいて、ダイハツ工業と日本ディープラーニング協会によるクロストークセッションが開催された。その中で、ダイハツが取り組むAI活用の取り組みが紹介された。

取り組みを発表したのは、ダイハツ工業 DX推進室 グループ長 太古無限氏。進行役としてJDLA理事・事務局長 岡田隆太朗氏がモデレータを務めた。

自動車業界リスキリングの重要性

自動車業界においてもリスキリングが重要なワードになっている。言わずと知れた100年に一度の変革期にある業界において、新しいビジネスモデル、新しい技術、新しいサプライチェーンに必要な知識や概念。内容によってはこれまでの業界常識が足かせや障害になることさえある。

類似の考え方として、少し前は「生涯学習」「リカレント教育」といった用語が用いられていた。いまは「リスキリング」を各社が取り組んでいる。重要なのは用語ではなく「なにをするのか」だ。業界におけるリスキリングは、リカレント教育より実際の問題や課題に直結した学習、スキル習得の話であることが多い。

CASE車両開発のため、電動車技術の理解と習得、クラウドやサービスを含んだ上位レイヤのコネクテッド機能、シェアリングエコノミーやMaaSといった視点からの自動車ビジネスモデルの再構築(SDVはその一例)、さらにはカーボンニュートラルとそれに直結するエネルギー課題への現状認識とソリューション。このような知識がないと、せっかく高性能な自動車ハードウェアを作る力があっても市場で成功できるとは限らない。

端的に表現するなら、バッテリーやネットワーク技術、Webビジネス、ソフトウェア開発やAIの知識がないと自動車業界での生き残りは難しいということだ。製造業だけの視点では、AIやネットの知識は自動車の価値や性能に関係ないかもしれないが、モビリティカンパニーやCASE市場の視点では通用しない。

ダイハツのAIによるDXの取り組み

自動車業界におけるAI研究は、ADAS用のカメラに内蔵された画像認識AIから、テスラ、国内ならTierIV、Turingなどが研究するAIまでレベルや範囲は広い。カーナビやインフォテインメント用では、音声認識などエージェントAIの開発も進んでいる。

リスキリングの取り組みで見ると、デンソーやボッシュがAI人材の確保と社内教育に力を入れている。彼らがAIに注力するのは、両者ともに半導体事業も手掛ける電装品に強いサプライヤーだからだ。とくにボッシュは自動車部品以外、FAや医療機器、家電など幅広い事業展開をしている。デバイスや機器ビジネスだけでなく、AIを前提とした付加価値市場にいち早く名乗りを上げている。

このような戦略的にAIやDXを推進する企業があるなか、ボトムアップでAI、DXに取り組んでいるのがダイハツだ。DXのアプローチにもボトムアップ型とトップダウン型がある。どちらがいい悪いは存在しない。企業や組織に見合った形で両者が広がるのが普通だからだ。

太古氏によれば、ダイハツがAIに取り組んだきっかけは社内の有志による活動からだという。2017年に始まった活動は、わずか3名で「AIを普段の業務に生かせるか」という単純な疑問からのもの。2年ほど社内の勉強会のような形で研究や議論が続けられた。2020年に東京LABOデータサイエンスグループという形になり、仲間を増やし、活動事例を作って社内に情報発信も始まった。

活動とは、AIを使って業務改善を行ったりツールを作ったりというものだ。まさに草の根活動であり、ボトムアップ活動の典型例である。22年には「DX推進室」という全社単位の正式な部署が設立された。23年にはDX推進室は新DX推進室となり、組織としてトップダウンの施策も始まった。太古氏は「会社のビジョンにもDX推進、AI活用が盛り込まれ、社内でAI利用を広げるAI民主化をさらに推進させていく」という。

AI人材を育成する「道場」

AI人材育成は22年12月から始まった。全体のビジョンではDX人材を1000人育てるという目標がある。その中でAI活用人材は25年までに300人。現在すでに100人ほどがAI人材育成プログラムの研修を修了しているとする(太古氏)。


《中尾真二》

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