【ヨコハマ ADVAN db V553 試乗】次世代プレミアムコンフォートタイヤの最適解…九島辰也

【ヨコハマ ADVAN db V553 試乗】次世代プレミアムコンフォートタイヤの最適解…九島辰也
【ヨコハマ ADVAN db V553 試乗】次世代プレミアムコンフォートタイヤの最適解…九島辰也全 46 枚

◆目まぐるしく進化するクルマ、同時にタイヤに求められる性能も高まる

タイヤの進化が目まぐるしい。というか、これまで以上にパフォーマンスが求められるようになってきた。理由はクルマ自体の急速な進化だが、中でもEVに関してはそれなりの対応が必要になっている。瞬間的な太いトルクの立ち上がりを含め、内燃機関とは異なる特性があるからだ。走り以外では静粛性というのもポイント。なんたって“エンジン音”がごっそりなくなるのだからこれまでと同じとはいかない。

エンジン音がなくなると、聞こえなかった音や周波数が聞こえたり肌で感じたりする。走行中ドアミラーあたりで鳴る風切り音に「こんな音がするんだ」なんて発見をすることだろう。いくら風洞実験を繰り返して風の整流を作っても、消しきれない音はある。ロードノイズもそうだ。これまで聞こえにくかった“ゴーっ”という長い周波数のタイヤの転がり音が、EVになると気になる人が増えるかもしれない。

ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』

今回試した横浜ゴムの新タイヤ「ADVAN dB V553」はまさにそんな背景から生まれたといえる。BEVやプラグインハイブリッドに代表されるEV走行を鑑みて進化させた。なんたってdBデシベル)と名付けられたシリーズなのだから、そこで本領発揮すること間違いなし。新型は2017年にリリースされた「ADVAN dB V552」の後継として誕生した。

ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』

さらにいえば、このタイヤはヨコハマタイヤが独自で基準を設けるEV向け「E+(イープラス)」の表示がサイドウォールに記載される。これは低電費や静粛性などEVに対応する技術を搭載していることの意味で、第1弾はADVAN Sport EVであった。今後商品ラインナップにこのマークが順次ついていくことは間違いない。

ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』

dBシリーズはプレミアムコンフォートタイヤということも付け加えておこう。つまりすべてのクルマを対象にしているのではなく、プレミアムなモデルに向けて開発されている。堅牢なボディ剛性の上に成り立つ静粛性、気密性が高いことを前提としているのだ。

よってADVAN dB V553の進化の内容は、静けさと快適な乗り心地を向上させるのはもちろんのこと、摩耗による静粛性とウェット性能の低下を抑えることにも注力された。タイヤメーカーとしてはトレッドが減ったら性能が極端に落ちたといわれないようにしなければならない。

◆新製品と旧製品を3つの状態で比較テスト、V553のロングライフ性を体感

ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』

前置きが長くなったが、新タイヤ「ADVAN dB V553」のテストドライブを行ったのでその話に移ろう。評価するのは新品と5分山(50%摩耗した状態)のdb V553、そして5分山の従来型db V552の3種類。タイヤサイズは225/55R19、テスト車輌はトヨタクラウン クロスオーバー』で統一される。

ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』

まず新型(db V553)の新品状態はトータルで乗り心地がよくフラット感もある。転がり抵抗が低いのかスーッと滑らかな乗り味だ。特にスピード設定されたゾーンでは、時速60キロよりも時速80キロの方が周波数は気持ち良かった。少し高めの速度域の方がよりフラットさが強調されるようだ。

ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』

ただトレッド面のゴムが新しいこともあり、路面によっては当たりが硬く感じられる。その意味では500キロ、いや1,000キロくらい走った後の方がより快適性は高まり、パフォーマンスは発揮できるだろう。

ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』

その証拠に、直後に乗ったおよそ5分山のdB V553の方があたりが柔らかく感じた。まっさらの新型よりマイルドさがある。コース上には3つのマンホールがありそこが路面からの一番大きな入力になっていたが、そこも新品とほとんど変わらぬクオリティを発揮する。ほんの少し入力が強くなるが気持ちよさは残る。

モータージャーナリスト 九島 辰也氏モータージャーナリスト 九島 辰也氏

最後に試した従来型(db V552)の5分山も極端にパフォーマンスが落ちることはない。新型の5分山との違いは入力に対しての音が少し大きくなるくらいだ。同じところを時速40キロで走ってその違いが感じられた。

ただ今回のテストドライブで使った2種類の5分山タイヤは、意図的に削ったものなので実際と違い経年してはいない。コンパウンドが新品の5分山、という不自然な状態であることを頭に入れた方がいいだろう。ゴム自体が経年劣化すればまた少し違った印象を持つかもしれない。

◆一般道でミニバンやSUV、軽自動車、乗用車の4タイプをテスト、フラットライド感は変わらず

ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』ヨコハマタイヤ『ADVAN db V553』

この他では、ミニバンやSUV、軽自動車、乗用車の4つのタイプのクルマに履かせて各20分間一般道を走ったが、その特性はあまり見分けられなかった。唯一新型トヨタプリウス』の足元が引き締まった気がしただけ。走り出しコンパウンドはまだ硬めでゴツゴツするが、そこからは転がり抵抗が低いのかスムーズでフラット感は強かった。やはり操作系がクイックな方がその違いがわかりやすいだろう。三菱エクリプスクロス』はロールが深かったのでその先の動きでわかるのかもしれないが、一般道で試すのは難しい。

というのが新タイヤ「ADVAN dB V553」とのファーストコンタクト。従来型の正常進化版としてさらにパフォーマンスを上げたのは確か。個人的に気に入ったのはウェット性能の向上。992型のポルシェ911』をはじめ、いま各プレミアムモデルはウェット性能をフィーチャーしている。その意味でタイヤも同じベクトルに向かっているのはユーザー目線でも嬉しいことである。

モータージャーナリスト 九島 辰也氏モータージャーナリスト 九島 辰也氏

《九島辰也》

九島辰也

九島辰也|モータージャーナリスト 外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。

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