[VW ゴルフ 50周年]ビートル後継モデル開発の舞台裏

VWビートル
VWビートル全 17 枚

1960年代後半、世界は様々な変革を迎えていた。自動車業界でも新たな動きが見られた。フォルクスワーゲン(VW)においては、『ビートル』の後継車が模索されていた。のちの『ゴルフ』だ。エンジニアやデザイナーたちは、大小さまざまな新型車のアイデアを練っていた。

向かって左からEA 276、ゴルフ初代、EA 266向かって左からEA 276、ゴルフ初代、EA 266

実はビートル後継車には、VWにとって新型車1車種以上の使命が課せられていた。ビートルのアメリカへの輸出に収益を依存している状況はリスクをはらんでおり、1964年にアメリカから帰国し取締役に就任したカール・H. ハーン(後に会長)は「ビートルが心臓発作を起こせば、私たちの終わりを意味する」と当時述べている。ビートルの空冷エンジンや、リアエンジンで後輪を駆動するレイアウトも旧態化していた。

ビートル後継車の開発作業は、この後、1960年代後半にウォルフスブルクで始まった。例えば、試作車の一つ「EA 266」は、車体中央床下にエンジンを搭載するユニークなフォーマットだった。1970年代初頭までは、実験や開発、そして選択肢の排除の連続だった。当時デザイン開発の先駆者だったイタリアのスタジオ、ベルトーネ、ギア、イタルデザイン、ピニンファリーナも関与していたという。

EA 266EA 266

1970/71年ごろには、ビートル後継車の基本要件が確立していた。それは、フロントに4気筒直列エンジンを搭載し、トランスミッションもフロントに配置し、時代で古びないボディデザインを組み合わせる、というものだった。

いくつかの試作車の中で、1969年の「EA 276」は、後のゴルフの多くの特徴を備えていた。フロントエンジン、大きなトランクリッド付きのハッチバック、トーションビームアクスルなどである。ただボンネットの下には、ビートルと同じ空冷ボクサーエンジンが搭載されており、信頼性と低コストが重視されていた。

EA 266とハーン元会長。右はゴルフ初代EA 266とハーン元会長。右はゴルフ初代

しかし空冷の時代は終わりを告げつつあった。EA 276のデザインは先駆的だったが、量産に向けて別のコンセプト車両がさらに開発され、新型車のデザインはジョルジェット・ジウジアーロ(イタルデザイン)が手がけることになった。

ついに新たな時代がゴルフで始まった。フロントエンジンと前輪駆動の時代だ。なお、この動きは、VWでは1973年に発表された『シロッコ』と『パサート』によって始動していた。またVWで最初のフロントエンジン・前輪駆動車は、1970年に発表された『K70』だ。NSUが開発していたミドルクラスのセダンで、NSUがVWグループになったことから、ラインナップの刷新を準備していたVWブランドで発売されたのだった。ビートルを置き換えた事実、そしてその後の成功の大きさから“革新的”という文脈で語られがちなゴルフだが、“満を持して”の登場でもあったわけだ。

ビートル後継のボツ案ビートル後継のボツ案
[VW ゴルフ 50周年]
EA 276EA 276フォルクスワーゲンの歴史が切り替わった瞬間
https://response.jp/article/2024/04/30/381550.htmlEA 276EA 276
第2世代が永遠のデザインDNAを決定…最初の進化
EA 276EA 276https://response.jp/article/2024/05/01/381577.html
EA 276EA 276第3世代は安全性を重視
https://response.jp/article/2024/05/02/381600.htmlEA 276EA 276

《高木啓》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. 6年ぶりビッグネーム復活!? 新開発のV12エンジンが搭載されるフラッグシップGTとは
  2. トヨタ『シエンタ』対応の「車中泊キット」一般販売開始
  3. スズキ スーパーキャリイ 特別仕様は“For Your Work Buddy”…デザイナーの思いとは?
  4. VW『ゴルフ』改良新型、新PHEVはEVモード143kmに拡大…欧州受注スタート
  5. 街乗りでも効果絶大! アライメント調整で車の走行性能をアップさせる方法~カスタムHOW TO~
  6. トヨタ紡織が「FCアシスト自転車」など、カーボンニュートラルに向けた製品・技術を展示へ…くるまのテクノロジー展2024
  7. 水平対向8気筒エンジン搭載バイクは世界唯一、中国長城汽車の「SOUO」ブランドが発表
  8. BMWが14車種の新型車を発売へ…『X3』や『1シリーズ』に新型 2024年
  9. 生誕50周年、シトロエン『CX』が全国から集まる! 日本シトロエンクラブが記念ミーティング
  10. モビリティの進化に対応した“つなぐ”提案から、より積極的に共創型ビジネスを打ち出す矢崎総業…人とくるまのテクノロジー展2024出展の見どころは?PR
ランキングをもっと見る