今回開発された消救車は、ボディ素材にFRPを活用することで、机上の計画だったものが実現することになった。「FRPの採用は軽量化というメリットを生み出し、それよりも大きかったのは設計の自由度が増したことだった」と、常務取締役・生産統括部長の丸山好春さんは語る。
消救車を設計する上で“不変”とされ、最も重要視された要素は消防用のポンプ。普通消防ポンプ車の規格である「CD-1」の能力(2400リットル/分)を確保しつつ、救急スペースを作り出すには金属ボディでは無理があったという。もちろん鋼製の箱を作ることはできるが、4トン車ベースでは上モノが重すぎると動力系に負担が掛かる。結果として機動性を損ね、現実味が無くなってしまうのだ。そこで着目した素材がFRPだったという。
またFRPの車体パーツへの採用によって、ポンプ室の配管を比較的自由に取り回せるようにもなった。これがスペースの効率化にもつながり、救急スペースの確保を決定的なものとした。一石二鳥どころか、三鳥、四鳥にもなったわけだ。
さらに今2002年、消防庁の「補助企画」規制緩和により、消防車の車体構造にFRPの仕様が認められて、消救車は具現化した。技術統括部開発部長の北川しゅう(玉偏に秀)さんによれば、規制緩和以前から、新型緊急車両の提案としてFRPの仕様を検討していたという。