西日本高速道路が13日、九州エリア内(下関、沖縄含む)53カ所の高速道路のサービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)内で、高速道路SA・PA初の試みとして小額決済システムの導入実験を行うと発表した。この実験は2006年4月−07年3月の1年間、実施される予定だ。
高速道路のキャッシュレス決済システムというと、自動車業界関係者が想起するのはETC/DSRCであるが、今回、実証実験で用いられるのはそれではない。ソニーが開発した非接触IC技術「FeliCa」を使った電子マネーやクレジット決済サービスである。
西日本高速道路では各SA・PAでの利用状況や利便性の向上を計る目的で、電子マネーではビットワレットの「Edy」、クレジットサービスとしてはJCBの「QUICPay」(クイックペイ)、三井住友カードの「iD」、UFJニコスの「Smartplus」を導入する。EdyやQUICPayなどはプラスティックカードもあるが、これらはFeliCa内蔵携帯電話「おサイフケータイ」向けとして急伸しているサービスだ。
◆ロードサイドをねらうFeliCa陣営
ITSビジネスの視点では、ETC/DSRCのロードサイド決済に注目が集まっているが、一方で無視できないのが、FeliCaを使った様々な決済サービスの「ロードサイド進出」である。この分野は、JR東日本の「Suica」や香港の「オクトパス」など公共交通と組み合わせた電子マネーが有名だが、ロードサイド事業者での採用もすでに始まっている。
例えば、コインパーキング事業者大手のパーク24では、一部の駐車場で電子マネーのEdyやSuica対応が始まっている。同じく駐車場では、スルッとKANSAIの「PiTaPa」が関西の一部駐車場に対応し、クルマから公共交通への乗り換えをすると利用料が安くなる“パーク&ライド”促進のプログラムを実施中だ。ほかにも、ファミリーレストランのロイヤルホストが全店舗でQUICPayに対応するなど、FeliCa型の決済サービスはロードサイドの様々な業種に広がり始めている。
特にFeliCaを内蔵するおサイフケータイの登場後は、キャッシュレス決済の利便性に、通信を使った高いセキュリティ性能や優良顧客を囲い込むCRM機能を組み合わせることが容易になり、FeliCa型決済サービスの進化と普及に拍車がかかった。特に今年はおサイフケータイ向けクレジットサービスの本格普及が予想されている。例えば、JCBのQUICPayと三井住友カードのiDはそれぞれ「08年までに10万店舗」の対応店舗拡大を掲げている。
◆おサイフケータイは用途も多彩なニーズに応える
携帯電話業界では、おサイフケータイの普及は既定路線。この分野の牽引役であるドコモはもちろん、auやボーダフォンも標準搭載が視野に入っている。ユーザーのニーズや利用継続率も高い。今後、おサイフケータイ向けの多様な決済サービスが競争しつつ、広がるのは時間の問題であり、ロードサイド決済市場もその例外ではない。
携帯電話が普及するスピードの速さ、サービスの多様性と汎用性を鑑みれば、自動車メーカーおよびロードサイド事業者は、おサイフケータイを無視すべきではないだろう。今回の西日本高速道路のように積極的な活用を考えていく必要がある。