ようやく「明日」をみることができるように……
マツダが2007年度を基点とする4カ年の中期計画「アドバンスメントプラン」を始動させた。最終年となる2010年度に、世界販売(マツダブランドの小売ベース)を06年度より23%多い160万台以上とし、連結営業利益2000億円以上の達成を目指す。
過去5年間のふたつの中期計画で経営再建を成し遂げ、新計画では持続的な成長路線に舵を切る。掲げた数値は「決して容易な目標ではない」(井巻久一社長)ものの、ブランド力重視という前中期計画で見せた経営のプライオリティを堅持すれば、目標達成がたぐり寄せられることになろう。
「これまでは今日を生きなければ明日がないとやってきたが、ようやく明日が見られるようになった」。中期計画発表の席上、井巻社長は再建の完了をこうした表現で宣言した。
新計画では、大幅に利益目標を上回った前中期計画「モメンタム」で蓄積したキャッシュフローを、研究開発費や設備投資に積極的に振り向ける。これまでの4年間に比べ、開発費は3割、設備投資は5割の増加を計画している。
◆為替リスクをにらみながら、能力増はまず国内
新モデルや環境対応技術、内外での生産能力増に振り向けるものだ。ただ、あらゆる面で慎重にことを運ぶのが井巻流の舵取りでもある。生産能力増では、まず国内の2工場(本社、防府)で合計約10万台の拡大を今年度に実施するにとどめている。
為替変動に対するリスクは膨らむものの、投資負担額やブランドに直結する品質確保を念頭に置いた判断だ。海外では早晩、フォードモーターとの合弁によるタイ新工場の計画が発表されることになろう。
だが、「工場建設は簡単だが、開発や販売、サプライヤーの現地進出など検討すべきことはたくさんある」(井巻社長)と、北米や欧州での供給増計画にはあくまで慎重な姿勢で臨む。国内工場の閉鎖も経験した生産部門育ちならではの算段だ。
◆数字への柔軟さがブランドを高める
一方でブランド強化策では、技術開発の長期ビジョン「サスティナブルZoom-Zoom」を策定、経営再建の原動力となった商品力に一層磨きをかける道筋を明快にした。新計画の第1弾として今年前半に投入される『デミオ』は、内外の顧客から相当な支持を獲得、ブランド力強化の先兵となりそう。
前計画の「モメンタム」では、世界出荷の台数目標の達成を、あえて先送りする決断を下した。数字にこだわればブランドの毀損につながるとの判断だった。引くときは引くという柔軟さが、「アドバンスメントプラン」でもブランド力強化をもたらすことになろう。