スロットル弁の代わりにエンジンの吸気バルブの開閉を調節することでエンジン出力を調整するという日産自動車の新バルブコントロール機構「VVEL」。効能的には先発技術であるBMWの「バルブトロニック」やトヨタの「バルブマチック」と同じだが、バルブコントロール部分の仕組みはオリジナルだ。
VVELシステムがバルブリフターを押す動きはいささかわかりにくい。動力の起点はカムシャフトに相当するドライブシャフト(車輪に駆動力を伝達するドライブシャフトとは別)で、ドライブシャフトに取り付けられた真円の偏心カムがヒョウタン状のリンクAの中で回転し、リンクAに往復運動を発生させる。その力が天秤状のロケットアーム、リンクBを介してアウトプットカムに往復運動として伝わり、バルブリフターを押し下げるのだ。
バルブの動作量を調節するのは、ロケットアームに仕込まれた偏心カムだ。偏心カムの角度を変えることでロケットアームの支点が変化し、各部のスイング動作の幅も変わるというわけだ。偏心カムの角度の調整は、カム山が設けられたコントロールシャフトをDCモーターがボール/ナット式で行う。
動弁系にリンクが多用されているため、イメージ的にはフリクションの面で不利ではないかと思えるが、実際には摺動ロスはBMWのバルブトロニックと比べてもかなり低く抑えられているという。ドライブシャフト、コントロールシャフトの二つの回転体に設けられたカムがいずれも偏心型の真円であるなど、円運動が基本となっているところがミソだ。
実際、ボール/ナットを介してコントロールシャフトを動かしているDCモーターは出力100Wと、バルブトロニックに比べてずっと小さいが、それで十分にリアルタイムで連続可変動作を行うことが可能だという。
また、日産自動車のエンジニアは、フリクションが小さく応答性が高いことは、最高許容回転数を引き上げることにも貢献していると主張している。