【神尾寿のアンプラグド特別編】拡大するパーク&ライド。首都圏ではPASMO / Suicaで

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【神尾寿のアンプラグド特別編】拡大するパーク&ライド。首都圏ではPASMO / Suicaで
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昨年のITS世界会議で顕著に感じられた点であるが、21世紀型の交通システムのトレンドは「クルマ利用の抑制」と「公共交通の利用促進」だ。特に都市交通分野では、欧米を中心に「車両乗り入れ規制(トランジットモール)」や「渋滞課金(ロードプライシング)」の導入が活発化。あわせてカーシェアリングやパーク&ライド、トラム(路面電車)や自転車道の整備などが積極的に行われている。

日本でも、このような「クルマと公共交通の連携」への取り組みが活発化し始めた。4月20日、パーク24と東武鉄道が、首都圏で初めてとなる交通IC連携のパーク&ライドの商用サービスを開始した。これは首都圏で普及する「PASMO」(Suicaにも対応)を使い、“電車に乗った人は駐車料金を割引する”というものだ。サービス開始時点で、「タイムズ幸手駅前」(東武日光線幸手駅:駐車台数89台)と「タイムズ新座志木」(東武東上線志木駅:駐車台数368台)の2か所が対応している。

そこで今回のアンプラグド特別編では、首都圏初のパーク&ライドが導入された「タイムズ幸手駅前」を取材。サービスの状況と可能性について紹介する。

◆PASMO/Suicaの「降車履歴情報」で割引

パーク&ライドの基本コンセプトは、自宅から最寄り駅(海外ではトラムやバスのステーションも多い)まではクルマを使い、そこから先はクルマを駐車場にとめて“公共交通に乗り換える”というものだ。都市部へのクルマ流入量を減らすことで交通渋滞を緩和し、大気汚染や経済損失を抑制。一方でユーザーは、「家から最寄り駅まで」まではクルマの利便性を享受しつつ、都市部に入る際の渋滞を避けて、時間とガソリンを節約できるというメリットがある。

このパーク&ライドにおいて、ユーザー側のベネフィットになるのが「料金面での割引」だ。パーク&ライド利用時には、公共交通もしくは駐車場の利用料金を安くすることで、公共交通を使う利便性に加えて経済的なメリットを打ち出している。

今回、パーク24と東武鉄道が導入したパーク&ライドのシステムでは、“クルマから電車に乗り換えた”ことの確認用に交通ICの「PASMO(Suicaも利用可能)」を使う。これにより無人のコインパーキングでも、低コストかつ不正利用の起きない形でパーク&ライドを実現した。

具体的なサービスの流れを見てみよう。

パーク&ライド対応のタイムズでは、精算機にPASMO/Suicaをかざすための「リーダー/ライター(読み取り機)」が2つ搭載されている。1つは「PASMO/Suicaの降車情報」を参照するためのもの、そしてもう1つが「PASMO/Suica決済」をするためのものだ。

パーク&ライドを利用するには、出庫時に駐車券を挿入し、パーク&ライド開始ボタンを押す。その後、幸手駅での下車時に利用したPASMO/Suicaをパーク&ライド用のリーダー/ライターにかざすと、IC内に保存されている駅降車履歴と駐車日の照合が行われて、一律200円が割引される。その後の支払いは、現金、クレジットカード、PASMO/Suica決済のいずれかを利用できる。

「タイムズ幸手駅前」の最大料金は24時間600円なので、パーク&ライドを利用すれば、たった400円で丸々1日駐車しておくことができる。また、PASMO/Suicaの降車履歴確認では終電情報も加味されるため、駐車日の終電を利用した場合は、日付が変わっていても同一日の利用とみなしてパーク&ライドサービスの割引が適用される。このように鉄道運行にあわせたサービス構築が可能なのも、鉄道・バス会社が広く利用する交通ICを認証で使うメリットだろう。

◆駐車場と交通ICは「相性がいい」

今回、東武鉄道とともにパーク&ライドに取り組んだパーク24は、昨年7月にも大阪で交通ICのひとつ「OSAKA PiTaPa」を用いたパーク&ライドサービスの実現をしている。同社は駐車場のオンライン管理システム「TONIC(Times Online Network & Infomation Center)」を全国約7500か所のタイムズ駐車場に整備済みであり、クレジットカードやポイントカード、FeliCa決済への対応とともに、こういった新規サービス分野の開拓に熱心だ。

パーク&ライド以外の部分で見ると、SuicaやPASMOなど交通ICの電子マネーが、「駐車場とは相性がいい」とパーク24 事業企画部事業推進部TONICグループマネージャーの岩淵泰治氏は話す。パーク24では40か所のタイムズ駐車場において、Suica/PASMO電子マネーに対応しているが、その利用の伸びが好調だというのだ。

「決済の部分で見ますと、PASMO/Suicaなど交通IC電子マネーの利用は急拡大しています。利用全体の15%以上がPASMO/Suica決済というところも出てきている。クレジットカードの利用率は平均5%前後なのですけれども、全体的に見ても交通IC電子マネーの利用率はそれ(クレジットカード)より高い傾向にあります」(岩淵氏)

コインパーキングの平均決済額は約700円であり、これは電子マネーにとって利用しやすい決済額である。さらに前回のコラムで書いたとおり、公共交通のIC乗車券と共通化された交通IC電子マネーは、普及と利用率の両方で急速な伸びを示している。駅や駅周辺のコインパーキングを中心に、「PASMO/Suicaに対応したタイムズでは、お客様のリピート率が上昇するという効果も現れている」(岩淵氏)というのは頷けるところだ。

クルマの利用抑制と公共交通の利用促進は世界的な流れであり、「クルマと公共交通の連携」は、今後、様々な新サービスや新ビジネスを生み出す土壌になる。21世紀の交通システムを構築する上で、公共交通との連携領域の拡大は、自動車業界にとっても積極的に取り組む価値があるだろう。

《神尾寿》

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