新型『A4』のデザインに、ボクはアウディの「心変わり」を感じる。FFを基本とするレイアウトだが、デフの位置を前進させてフロントオーバーハングを短縮したプロポーションは、むしろFRのそれに近い。
「FFの合理性を表現する」のが70年代から続くモダンデザインの主流で、アウディはまさにその代表格だったが、A4のプロポーションは明らかにそれと一線を画している。
ボディサイドのキャラクターラインが後ろ下がりのカーブを描くのも、合理性とは違う要素。エレガントかつクラシックな雰囲気が漂う。モダニズムを追求してきたアウディが、クラシック路線へと転じたのだ。合理だけではプレミアムになれない。アウディとしては当然の変心だろう。
しかし、いざステアリングを握ってみて、デザインが示唆するほどの路線変更を乗り味には感じなかった。「優れた機械を操っている」という満足感はもちろんあるのだが、それは従来からのアウディの美点。デザインはその先の価値を見出した。走りにも、理に適った進化だけではない何かがほしい。人とクルマのインターフェイスにもうひと味、ゆとりのようなものがあれば…と思う。
■五つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
千葉匠│デザインジャーナリスト
1954年東京生まれ。千葉大学で工業デザインを専攻。商用車メーカーのデザイナー、カーデザイン専門誌の編集部を経て88年からフリーのデザインジャーナリスト。COTY選考委員、Auto Color Award 審査委員長、東海大学非常勤講師、AJAJ理事。