あのー、『C6』の立場はどうなるの? 新型『C5』に乗って、そんな素朴な疑問を抱いた。
インテリアの質感は正直、C6を超えていると思う。走り始めれば当然ながら最新の油空圧サスの乗り心地は素晴らしく、しかも操舵に対する身のこなしが軽快。ワインディングでも大柄なボディを意識することなく楽しめる。ここでもC6を超えた。
こうなったら、残るはデザイン勝負。一見してシトロエンらしくアバンギャルドなC6に比べたら、C5は普通っぽく思えるかもしれない。でも、あなどるなかれ。「らしさ」はちゃんと踏まえているのだよ。
プロポーションはフロントオーバーハングが長めで、リヤは短い。ルーフラインとベルトラインはアーチ型の滑らかなカーブを描く。どちらも往年の『DS』や『GS』、『CX』に共通するものだ。C6の半円型テールランプのような奇抜な要素はないが、C5は多くの人が親しみやすいフォルムのなかに、古き良き時代のシトロエンの個性を盛り込んでいる。
どこが目を引くわけではないのに、どこから見てもシトロエン。そこをボクは評価したい。C6の「わかりやすいデザイン」もいいけれど、C5はそこからひとつ進化したのだと思う。
千葉匠│デザインジャーナリスト
1954年東京生まれ。千葉大学で工業デザインを専攻。商用車メーカーのデザイナー、カーデザイン専門誌の編集部を経て88年からフリーのデザインジャーナリスト。COTY選考委員、Auto Color Award 審査委員長、東海大学非常勤講師、AJAJ理事。