イタリアで27日、運転中の喫煙を禁止する法案が国会上院委員会に提出された。集中力低下による事故を防ぐと同時に、同乗者を受動喫煙から守るのが目的。現行の道路交通法に項目を加える。
法案が可決されると、運転中の喫煙だけでなく、火をつけただけで違反の対象となる。違反者には250ユーロ(約3万2000円)の反則金と、5点の減点が課せられる。
イタリアでは2003年から点数制が導入され、各ドライバーには基本的に20点が与えられている。5点減点は、ハンズフリー装置なしで携帯電話を使用したときの減点と同じだ。
また、未成年者が同乗しているにもかかわらず、喫煙した乗員には500ユーロ(6万4000円)の反則金が課せられる。
今回の法案は、連立政権の中の一政党「北部同盟(レーガ・ノルド)」から提出された。法案を推進する同党のピエールジョルジョ・スティッフォーニ上院議員は、「窓を閉め切った車内で喫煙することは、ガス室に変貌する」と、その健康被害を強調する。ちなみに北部同盟は、イタリア北部の自治権拡大を主張することで知られる党。
法案は、今後数日中に委員会で可決・否決の投票が行なわれ、可決されると上院、下院の順で進む。イタリアでは同様の法案が2008年にも提出されたが、廃案となった。ちなみにイギリスでは、すでに2007年の道交法改正で、運転中の喫煙が禁止されている。
法案には、イタリア自動車クラブ(ACI)の幹部も賛同のコメントを発表している。ACIとイタリア中央統計局の最新統計によると、イタリアでは全体の15.5%にあたる4万件の事故が運転中の不注意で起きているという。この国の中古車ディーラーに並ぶ車のシートに焼け焦げ跡がみられるのも、喫煙ドライバー人口の多さを物語っている。
ただし、運転中の携帯電話使用の取り締まりさえ効率的に行なわれていない現状で、喫煙禁止が仮に法制化されても、どこまで効果があるかは疑問だ。
いっぽうイタリアの各都市では近年、反則金による収入向上を単に目指したと思われる、行き過ぎた駐車違反・信号違反取り締まりがクローズアップされてきた経緯がある。警察官は簡単な取り締まりだけでなく、より危険な運転中のマナーの取り締まりに力を注いでほしいものである。