トヨタ リコール、見えざる要因 その2…カイゼンゆえの検証不足

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プリウス(北米向け)。不具合は2004年型と05年型の初期生産分に発生
プリウス(北米向け)。不具合は2004年型と05年型の初期生産分に発生 全 1 枚 拡大写真

トヨタのリコール。だが、米国内では、今回のリコール問題については別の面が見え隠れする。解決すべき技術面の問題の影に、別の要因が隠されているようなのだ。まず最初の要因として、米国全体の反トヨタ、反日本の意識があげられる。さて二番目の要因だ。

★2005年のプリウス停止問題

今回のリコール問題では、トヨタの最大の美点である「安全」と「品質」という基盤が揺らいだと捉えられている。ところが、類似する問題はずいぶん前より指摘されてきており、またここ数年は別な車両などからもトヨタクオリティに疑問符がつくような事が続いていた。そのような中でも米国で特に話題になったのは2005年の「プリウス停止問題」である。

日本ではあまり大きくは取り上げられることはなかったこの問題、要約すると、ソフトウェアの不具合から停車してしまうというものだ。幸いにして死傷事故などはおこっておらず、ハイブリッド車の米国生産を前にして些細な瑕疵もないように徹底的な調査が行われたと聞いているが、この問題はトヨタが既にかつてのような綿密な製品開発の体制が取れなくなっていることを示しているとの指摘がある。

★トヨタ以外には不可能な完成度でも

トヨタの未来をに担う『プリウス』に関しては、開発/設計や生産に関してはトヨタの基準をもってしても、念には念を入れたものであったはず。ところが、そのハイブリッドシステムの中枢部に問題を抱えていた可能性があるということで、当時、他メーカーのあるエンジニアは別の観点からこの問題を分析していた。

それは、「全く新しいハイブリッド車を大量生産していながら、これほどまでに問題が無いというのはトヨタ以外には不可能なこと。トヨタはこれまでの長年の設計/生産から生み出された経験則も膨大であり、それらを利用するケースも多い。トヨタはあまりにも巨大な企業となってしまい、規模に比して人的資源が十分とは言えなくなってきた。そこで、利用者のシミュレーションやその確認作業など、過去の経験が活用出来る部分では、それに頼ってしまう傾向が強くなっているのではないか」というもの。

つまりプリウスの停止問題は、利用者が想定外の操作を行ったことで、結果として安全措置として車両が停止することとなった。トヨタさえもそのような事態を想定していなかった、もちろん検証もしていなかった。ひいては既にそういう体制ではなくなってしまっているのではないか、という推測だ。

★経験則が豊富ゆえの検証不足

そしてこの事件後モデルチェンジされた現行型プリウスで、ブレーキの電子制御部分に問題が見つかったのは、報道されているとおりである。さらに日本国内でも類似事例は散見され、例えばかつて「SW20」型の形式名を持つスポーツカー、2代目『MR2』は、初期には各専門家から「操縦性の開発が未熟だ」と指摘を受けたこともあった。

以前のトヨタであれば、十分以上の実地検証や試験を繰り返していたはずであり、それこそが今のトヨタの品質評価に繋がっていた。しかし今のトヨタには人的資産が不足しており、今回はアクセルペダルや電子制御部分にその綻びが生じた。

この分析であれば、今回のリコール問題も十分に納得がいく。どんな小さな部品であってもトヨタは常に「カイゼン」を行うが、その結果として問題が起こってしまったのだ。問題を事前に検証出来なかったのは、検証作業の不足を穴埋め出来るほどの十分な設計資産=経験則も有しているから。このようにいささか皮肉な状況が招いたのが今回のリコール問題の要因の一つという推測だ。

《NYCOARA, Inc. 田中秀憲》

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