ナノオプトニクス・エナジーは29日、鳥取県米子市にEVの生産拠点「ナノオプトニクス・エナジー米子EV工場」(仮称)を開設すると発表した。これに合わせて米子市では、藤原洋ナノオプトニクス・エナジー社長、野坂康夫米子市長、平井伸治鳥取県知事の3名が参加した共同調印式が開催された。
藤原社長は、米子市でEVを製造する理由として「環境エネルギー政策について、いくつかの都道府県を比較した。その中でも鳥取県は、非常に明確な環境エネルギー革命を掲げている県」と語った。また、「日本たばこ産業の米子工場はすばらしい。旧大蔵省が建設したおかげか、自動車会社の工場よりも建物がしっかりしているし、大規模な変電所もある。操業を終了して、更地にするのはもったいない建物だ」とEVの生産拠点とする日本たばこ産業の米子工場の建物も高く評価している。
ナノオプトニクス・エナジーの米子工場については、「地元で調達すること」を1つの目標として掲げた。
また、「鳥取県は、電気や電子部品メーカーが多い。地域の企業が参加できる枠組みを作りたい」と藤原社長。人材も地元から800人を採用する予定で、特に「Uターンの場所」として期待している。「東京で働いていた優秀な人材が鳥取に帰ってくると、ほとんどは市役所や県庁、銀行に就職してしまう。高度な知識を持った人が帰る場所として機能したい」と述べた。
同氏は、米子工場を中心とした地域で「地産地消形スマートグリッド」を将来的な構想としてあげた。スマートグリッドとは、電力の発電と消費を監視し効率よく制御する仕組み。エネルギーの効率的な利用が目的で、発電所は、太陽光、風力、水力などの環境エネルギーが想定されている。
現在の日本たばこ産業の工場には大規模な変電設備があり、スマートグリッドの開発や運用にはこれを活用。まずは、ソーラーパネルを設置して工場内で完結させるスマートグリッドの「プライベートグリッド」を構築する。将来的には、これを工場の外に拡大していきたい考え。鳥取県内にEVの充電設備を設置し、「EVが地域のスマートグリッドに接続される」というイメージを実現させる。
藤原社長は、スマートグリッドを管理する手段として「ホワイトスペース」が有効だとする。ホワイトスペースとは、テレビ放送波のうち使われていない帯域のことを指す。スマートグリッドでは、発電所や企業や家庭、EVなどをスマートグリッドを使って通信で結ぶということが検討されている。「情報(ホワイトスペース)と電力(スマートグリッド)の網を作り、EVはこの網につながる“移動式の情報端末”という位置づけになる」。
工場の操業開始は1年後だが、藤原社長は「4月から5月にはカーデザイナーを決定し、試作車を上海万博で展示したい」とした。