【池原照雄の単眼複眼】安価な技術でHVに挑む日産マーチ

エコカー 燃費
マーチ(画像は北京モーターショー10での発表時)
マーチ(画像は北京モーターショー10での発表時) 全 9 枚 拡大写真

ガソリン乗用車最高の26km/リットル

日産自動車が13日に発売する新型『マーチ』は、燃費性能が1リットル当たり26km(10・15モード測定)と、ハイブリッド車(HV)を除くガソリン乗用車では最高値を達成した。

新開発のエンジンや副変速機を備えるCVT(無段変速装置)に加え、アイドリングストップ装置も採用して燃費を徹底追求している。安価な既存技術の改良でも、HVがうかうかしておれない燃費が出せるようになってきた。

アイドリングストップ装置は昨年、マツダが「i-stop」を『アクセラ』などに搭載して市場投入し、人気を得ている。i-stop は1割程度の燃費改善につながっている。同社の山内孝社長によると、昨年は国内でアイドリングストップを採用した新車販売は前年の約6倍に達し、そのうち9割が同社のモデルだった。

◆「安い」を追求したアイドリングストップ装置

i-stopの場合、燃費性能とともにエンジン再始動までの時間を0.35秒に短縮してドライバーの違和感をなくしたのがヒットを呼ぶ大きな要素となった。頻繁にエンジン始動を繰り返すため、バッテリーの耐久性などに配慮する必要があるものの、コストアップは少ない。マツダは販売価格には「ほとんど上乗せしていない」(若山正純専務)という。

いわば万人向けのローコスト省燃費技術でもある。日産も搭載車種が価格に敏感なユーザーが購入するマーチであるため、アイドリングストップ装置は「安くすることに力点を置いた」(開発担当の西沢公良パワートレイン性能開発部主管)。

日産のシステムは、エンジンが止まる時の逆回転を検知するセンサーによってそれぞれのピストンの停止位置を計測するなどで、再始動の時間を短縮した。最初にクルマに乗って始動する時よりも0.2秒短い0.4秒で再始動できるようにしている。マツダのi-stopより少し長いが、ドライバーがストレスを感じない範囲に収めている。

燃費は約8%向上できたという。マツダのi-stopは直噴エンジンにしか採用できないが、マーチの場合は通常の燃料供給方式のエンジンに採用しており、適用範囲も広げることが可能だ。

◆ローコスト技術 VS ハイブリッド

また、マツダのシステムは始動専用のものを加え、バッテリーを2台積んでいるが、日産は耐久性や出力性能などに優れ、蓄電容量も通常より約1.5倍に増やしたタイプの採用でバッテリーを1台のみとした。

来年にはアイドリングストップ装置の採用や車体の大胆な軽量化によって1リットル当たり30km(10・15モード測定)の燃費性能を実現するダイハツ工業の軽乗用車『イース』も発売される。

3代目『プリウス』や価格を抑えた『インサイト』によって昨年、一気にブレークしたHVだが、今後は中途半端な燃費性能だと消費者の気持ちを掴むことは難しくなる。新型マーチの発売を機に、“ローコスト省燃費技術”とHVのせめぎあいが始まる。

《池原照雄》

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