【三菱ふそう 新型パワートレイン】小型トラックのダウンサイズが本格化

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新開発の3リットルターボディーゼルエンジン「4P10」
新開発の3リットルターボディーゼルエンジン「4P10」 全 3 枚 拡大写真

独ダイムラー系列の商用車メーカー、三菱ふそうトラック・バスが20日に発表した小型トラック向け次世代パワートレインは、アップデートな技術を盛り込んだ意欲的なシステムである。

エンジンはターボ過給制御の高度化などによって排気量を削減し、燃費を向上させる「ダウンサイジング」、排気系にはNOx(窒素酸化物)の排出レベルを極めて低く抑える「尿素SCR(選択還元触媒)」を採用、さらに変速機は2枚のクラッチと2系統のギアセットを使い分けることで、クラッチ式でありながら変速時の継ぎ目のない加速が得られる「DCT(デュアルクラッチトランスミッション)」、さらに「アイドリングストップ」も装着可能という充実ぶりだ。

新型エンジン「4P10」型3リットル直列4気筒DOHCターボディーゼルは、イタリアのエンジン開発・製造会社であるフィアット・パワートレイン・テクノロジーズの製品がベースで、製造も同社で行われる。エンジン本体やピエゾ噴射装置+コモンレール加圧システムなど基本部分の設計変更はせず、電磁EGRや専用チューンの可変ジオメトリー排気タービンを実装するなどして、日本の商用車に要求される排気ガスレベルやエンジンスペックを満たした。

このパワートレインは次期『キャンター』に搭載される。今日、キャンターの主力エンジンは4.9リットルターボディーゼルで、3リットルは負荷の小さい2t積み車や、モーターアシストのあるハイブリッドのみに採用されていた。それに対し、まもなくデビューするとみられる次期モデルでは「最大積載量3.5tクラスまではこの3リットルエンジンでカバーする」(三菱ふそう関係者)ことになるという。

最高出力110psから175psまで4種類が用意されており、最もパワフルなチューニングのものは、4.9リットルのトップモデルの180psとほぼ同等。出力特性も旧4.9リットルが2700rpm/分でピークパワーを発生させていたのに対し、次期型は2800~3500rpmでフラットに最大出力を発生させる。トルクの立ち上がり特性も大幅に改善したという。

「新3リットルエンジンはレッドゾーンが旧4.9リットルに比べて1000回転前後高い。どちらかといえば乗用車的なドライブフィールだと思う。DCTの採用などとあいまって、モード燃費は旧型より1割改善されます。ユーザーさんにとってメリットは大きいと自負しています」(三菱ふそう関係者)

乗用車も同様だが、ダウンサイジングの効果は低速巡航や市街地走行時などでより顕著に出る。小型トラックはそのようなシチュエーションでの走行が多く、実走行時の燃費向上にはかなり期待を持てそうだ。燃費競争が乗用車よりさらに厳しいトラックの世界では昔から16リットル自然吸気から11リットルターボへといったダウンサイジングが盛んに行わてきたが、5リットル級に置き換えられる3リットルが登場したことで、いよいよ小型トラックに本格的なダウンサイジング時代が到来することになりそうだ。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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