●ブリヂストン・ポテンザRE11
タイヤの重要性と優先順位は、ホビーレースであってもF1であっても変わらないという。葉書一枚ほどの面積でしかないタイヤのコンタクトパッチで、制動力もコーナリングフォースもトラクションも、すべての限界が決まってしまうからだ。
レース専用タイヤとしてすぐにイメージできるのが晴天用のスリックタイヤだろうが、ほとんどのホビーレースではスリックタイヤの使用が禁止されている。そこでアマチュアドライバーが走る舞台で主流となるのが通称「Sタイヤ」と呼ばれるセミスリックタイヤである。
ところがSタイヤは、レーシングスリックに極めて近いコンパウンドとコンストラクションを持つため、市販車ベースのレースカーに組み合わせる上では最強のチョイスと言えるだろうが、いかんせんその巨大なグリップ力と引き替えにライフが極端に短く、それゆえランニングコストが嵩んでしまう。12時間という長丁場を考えた場合に、必ずしもSタイヤがベストとならない。
近年では過去の常識を覆すスポーツラジアルタイヤが、日本のタイヤメーカーを中心にリリースされている。ブリヂストンが世界に誇るブランド、「ポテンザ」からリリースされている『RE11』は、ハイグリップを誇るスポーツラジアルタイヤの代表格だ。もちろんSタイヤに対してグリップ力は劣るのだろうが、ライフとグリップのバランスがどのレベルにあるかが重要だ。
再び、フィアット江戸川/アルファロメオ江戸川の染谷社長にRE11をチョイスした理由を尋ねてみた。
「実は他のイベント走行を通じてRE11のデータは持っていたのです。ただ前回は3時間程度の耐久レースで、今度の12時間耐久レースとなると単純に4倍のスティントになるわけですから、やはりタイヤチョイスも慎重に考えました。アイドラーズ12時間耐久レースの場合、安全面からの配慮で電動ツールをピット作業で使えず、レース中のタイヤ交換はタイムロスになるために、避けたかった」
「高いグリップを誇るRE11がどこまで持ってくれるかが勝負ではありましたが、7スティント目の直後でセーフティーカーが入ってくれたので、安全面を第一に考えてフロントをニュータイヤに交換しました。想像で言えば無交換だったらギリギリ行けたような気もしますが、後半戦のスパートを考えても適切な判断だったと思います」
各ドライバーの声を総合しても、RE11の優秀性は確かなようだ。「いつもはSタイヤで、初めてRE11に乗りましたが、追い込んでいっても破綻しないし乗りやすかったです。みんながブレーキパッドの性能を絶賛していましたが、RE11との組み合わせがあって初めてあのブレーキも生きてきたように思います」と語るのは、11人中でベストタイムを出したO氏。「RE11のポテンシャルは相当高いですね。とくに縦方向のグリップレベルは(Sタイヤと比較しても)充分でした」とK氏も絶賛。F1を頂点とするモータースポーツ活動から得た豊富なノウハウは、このように確実に製品レベルに生かされているようだ。