【トップインタビュー】オークション不要の「インスマートシステム」を構築…カーセブン 井上貴之社長

自動車 ビジネス
井上貴之社長
井上貴之社長 全 2 枚 拡大写真

多くのディーラー系の中古車取扱店を傘下に持つカーセブンディベロプメント。この同社の特徴を生かし、スマートフォンを用いた新システムの構築に取り組む。“中古車流通革命”の実現に向け動き出した同社の狙いを井上貴之社長に聞いた。

---先日、他の中古車流通業者に先駆けて外部故障診断機(スキャンツール)の導入を発表されました。

井上:現在はスキャンツールの導入に対して、当社で扱っている中古車のどれくらいにアラートが出るのか、ユーザーの声に変化はあるか、など調査を行っています。これまで、中古車流通では、スキャンツールによって知りたくない故障情報が判明してしまうと修理の手間や時間がかかってしまうということで敬遠されてきました。しかし、当社は多くのディーラー系の中古車取り扱い事業者をFCとして取り込んでいます。スキャンツールで得た情報を、中古車販売時の品質保証データとして用いることで、他社との差別化を実現し、中古車販売事業の強化を成し遂げたいのです。

---買い取り時の減額ではなく、販売時の品質保証に活用すると。

井上:そうです。厳しい品質検査を自ら課している姿勢を示すことが大切です。コンプライアンス強化という言葉がよく言われますが、私たちにとっては法律を遵守するのは最低のラインで、いかに高い企業倫理や商道徳を示すことができるかが、厳しい中古車流通業で生き残るポイントだと捉えています。スキャンツールの活用はその行動のひとつです。

◆中古車流通を変える「インスマートシステム」

---スキャンツールによる販売面での取り組みの他に、買取り強化のためのアクションはありますか。

井上:まず、近年の中古車流通ビジネスが厳しさを増している背景に、高年式中古車の減少による平均価格の下落があります。そうなると中古車オークションを介した流通にたよる業者は、オークション会場への陸送費や出品手数料などの固定費が割合として大きくなります。実際、新車ディーラーの営業利益率が1%近辺の今でも、中古車オークション会場を運営する会社の利幅は非常に大きく、約5割の営業利益率を誇るところもあります。我々はこのオークション会場独り勝ちの状況に変革を起こしたいと考えました。

---変革の具体像はどういったものなのですか

井上:中古車の流通にはユーザーから中古車を引き取る「買い取り」と、中古車をオークションで購入してユーザーへ販売する「仕入れ」があります。「買い取り」と「仕入れ」は中古車オークション会場によって結ばれています。買い取りは多くの広告宣伝費を払ってユーザーにアクセスし、中古車オークションを利用するにはオークション会場への手数料支払い、車両を会場に移動させる物流費を負担する必要があります。この「広告宣伝費」「手数料」「陸送費」という“3大コスト”を軽減する新しい流通の仕組みを社内では「買い取り保証」と呼んで準備していましたが、このたび「インスマートシステム」という名称で展開することにいたしました。

---どのように広告宣伝費や手数料、陸送費を節約するのでしょうか。

井上:インスマートシステムは、カーセブン本部が中古車流通にかかる関係者の負担を代わりに背負い、売買契約の成立を保証するシステムです。具体的には、ガソリンスタンドや整備業者などの店頭で、スマートフォンを利用した当社オリジナルの車両査定データベースを活用し、買い取りをしてもらいます。買い取りの資金はカーセブンが負担し、ガソリンスタンドや整備業者には手数料を支払います。

---スマートフォンの利用はポイントなのでしょうか。

井上:車には詳しいが電子機器に詳しくないガソリンスタンドや整備業者のためにタッチパネル方式の、使いやすい専用のソフトを搭載したスマートフォンを提供します。OSはアプリの開発が自由かつ無料で配布できるAndroidです。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの各キャリアで、インスマートシステムに対応する推奨スマートフォンを1機種ずつ用意します。

---買い取った車はどうなりますか。

井上:カーセブン加盟店はもちろん、フランチャイズとしての「カーセブン」の看板は掲げていないけれども当社のメニューを活用している「クラブネクスト」という約90法人のネットワークがあります。買い取り車の情報は、スマートフォンのインターネット回線経由でこれら企業に転送され、素早い成約に結びつけます。陸送費は成約した仕入れ側が負担して、買い取り側からの直送の1度で済みます。結果としてオークションに比べて約半分に陸送費を抑えることができます。

---「広告宣伝費」に関してはいかがでしょう。

井上:自動車整備事業者やガソリンスタンドなどでは、車検のタイミングで買い替えを考えるユーザーが多く、これらユーザーをインスマートシステムで買い取ることができれば広告宣伝費を抑えることができます。

---この仕組での流通量はどの程度を目指していますか

井上:今後3〜4年の間に中古車流通の約1割、30万台の流通を目指しています。3月16日からの国際オートアフターマーケットEXPO2011のブースでカーセブンのビジョンを示し、インスマートシステム利用者を募ってゆきます。とくに街の自動車整備工場やガソリンスタンド経営をされている方に呼びかけてゆきたいと考えています。いま中古車がもっとも高く販売されているのが、ディーラー系の認定中古車店舗です。カーセブンのネットワークには新車ディーラーが多く、もっとも高く車を買い取ることができる法人が揃っていると言えます。スマートフォンなどの新しいテクノロジーを活用し、新しい発想でいっしょに事業スキームを作りあげれば、魅力的な中古車を抱える国内市場で、新たなビジネスの構築と収益化が実現すると信じています。

(インタビュアー:三浦 和也、文責:土屋 篤司)

《レスポンス編集部》

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