決められない政治が、決めた
「決められない政治」が先週末に一気に決断へと動いた。消費税関連法案の与野党3党による修正合意と、関西電力大飯原発3・4号機の再稼働である。消費税増税の道筋が見えてきたことで、長年、日本を覆ってきた真っ赤っかの財政が再建に向けてやっと動き出す。子孫への借金のツケ回しに歯止めをかけることができ、これで日本は、よりましな未来に向かえる。
残念ながら、マスメディアは当座の政治的混乱のリポートに精を出しており、そういう視点は見当たらない。確かに、財政の根本政策での異例の与野党合意や、消費税増税と一体で進める社会保障改革の結論先送り、さらに民主党のマニフェスト破棄などなど、追及すべき点は盛りだくさんだ。
だが、それらを置いても、ポピュリズム(大衆迎合)万能の政治の世界で、長年の懸案であった増税を決めたことには、後年、高い評価がくだされるだろう。ポピュリズムといえば、借金に対する日本人の価値観は非常に健全で、むしろ、政治家がその価値観を見誤ってきたともいえる。
増税はいやだが借金はもっといや
つまり、各種の世論調査によると、最近でこそ消費税率引き上げには「反対」の回答が「賛成」を上回っているものの、昨年までは拮抗する調査結果が多く見られた。増税はいやだが、借金はもっといやなもの、孫子へのツケ回しはもってのほか---という金銭感覚は、日本人の美徳や勤勉さの表れだ。世界中を見回しても、こうした国民性は珍しい。そんな民意を見誤って、政治は借金の問題を先送りし続けてきた。
その借金の額は、こうしている間にも雪だるま式にどんどん増えている。最近はめったに報じられないものの、国と地方の長期債務残高は2012年3月末時点で903兆円に達した。主要先進国では最も高い対GDP(国内総生産)比率は同時点で1.92倍。国内でのモノづくりやサービス提供など、みんなが働いて生み出している付加価値総額の2倍近くに及んでいるのだ。
自動車取得税と重量税は抜本見直し
どじょう宰相こと野田佳彦首相が「政治生命をかけて」と、消費税増税に執念を燃やすのも借金大国のリーダーとして当然といえば当然であった。財政再建問題は、この6年で、ほぼ1年ごとに政権を投げ出してきた5人の無能リーダーたちが野田首相に与えた政治家としての“チャンス”であったと言えなくもない。
消費税増税に関する3党合意では、自動車税制の見直しや住宅取得者に対する対策など、景気への影響にも配慮された項目も盛り込まれている。
自動車では関連業界やユーザー団体が長年の課題としてきた車体課税、すなわち自動車取得税と自動車重量税について「抜本的な見直し」を行い、消費税率が8%に引き上げられる予定の2014年4月までに結論を得ることとなっている。少なくとも消費税と2重課税になっている取得税は廃止して、消費税1本とする簡素で公平な税制としなければならない。