7月にフルモデルチェンジされたトヨタ『ポルテ』とその姉妹車である新型車『スペイド』には、福祉車両も設定されている。開口部の大きいスライドドアを持つポルテは、従来型でも福祉車両(ウェルキャブ)が根強い人気を維持してきたが、今回のモデルチェンジでさらに使い勝手を高めたという。
今回、東京都杉並区にあるトヨタの福祉車両展示場「トヨタハートフルプラザ東京」で主要モデルを取材した。
コンパクトなボディと機能性・積載性の面で優れた使い勝手が特長で、個人ユーザーを中心に売れ筋の『スペイド』と『ラクティス』という2台のウェルキャブをレポートする。
◆車いすのままでクルマに乗車…トヨタ スペイド サイドアクセス車
『トヨタ スペイド サイドアクセス車』(脱着シート+専用車いす仕様)は、リモコンのスイッチでサイドアクセスユニットを昇降させ、専用車いすのまま助手席に乗り込めるタイプ。車いすからシートへの移乗に負担を感じている人向けの福祉車両として注目されている。
要介護者の移乗負担を軽減するが、乗車定員が通常のクルマよりも1人ぶん減るという条件が付く。助手席の後ろに、ユニット固定器具が付くなどの関係で、乗車定員は3人だ。旧型ポルテは運転席側にリアドアがなかったため、車いす乗車後に後部座席に乗り込む作業は難しかったが、新型ポルテおよびスペイドには運転席側リアドアが付き、使い勝手が大幅に向上。乗車定員が少ない分、コンパクトなボディでも居住性は十分で、積載性にも余裕がある。
◆リアゲートからの乗り込み可、後部座席も利用できる…ラクティス 車いす仕様車
また、前出のスペイドと同様、車いすのままそのまま乗り込めて、車両後部のスロープ(案内レール)を介して車いすのまま乗降できるタイプのひとつが『ラクティス 車いす仕様車(タイプI・助手席側リヤシート付)』だ。
車いすの乗降は、まず後部ドアを開け、手動でスロープを下ろす。車高降下機構によってリアがゆっくりと沈み、低い車高を保ちながら車いす固定装置を介して乗降させるという流れ。
前出のサイドアクセス車と違って、車いす仕様車(スロープタイプ)は、要介護者が後部座席に乗ることで、孤独感を抱くことも否めなかった。
このラクティスには、車いす格納スペースの右隣に、介護者などが座れる座席が確保されている。こうしたことで、介護者の距離を近づけ、要介護者の孤独感を低減。車いすを利用しない時は前方に折りたたまれていた後部座席を引き起こすことで、乗車できるのでこちらは定員5人を確保している。
◆細かな気づきを実感できるトヨタハートフルプラザ
こうした細かな違いに気づいたり、タイプの異なる福祉車両を比較検討する場として、札幌・仙台・千葉・千葉中央・東京・横浜・名古屋・神戸・福岡と全国9か所に展開しているトヨタハートフルプラザ(常設展示場)がある。
ハートフルプラザ東京のチーフエキスパート川合友継氏は、「当店には常時20台以上の福祉車両を展示しています。介護する人、介護される人が、いっしょになって見て、触れて、体感して最適な一台を選んで欲しいと思います」と語る。
川合氏は「トヨタは、トヨタ店・トヨペット店・カローラ店・ネッツ店と、販売チャンネルが別れていて、扱う車種に違いがありますが、ハートフルプラザにはそうした分け隔てがないので、トヨタのさまざまな福祉車両を比較検討することができます」と説明する。
利用者一人ひとりの体の状態と家族の利用形態に合わせ、さまざまなウェルキャブを比較検討する場として活用してほしいとの認識だ。