トヨタ自動車、ホンダに対してハイブリッドカー開発で出遅れていた日産自動車。現時点のラインナップは高級セダン『シーマ』『フーガハイブリッド』のみだが、2013年以降、ハイブリッドパワートレインを複数車種に逐次投入することで巻き返しを図る構えだ。
10月、日産は新開発のFWD(前輪駆動車)用ハイブリッドパワートレインを公開した。昨年試作品を発表した2.5リットル直4スーパーチャージャーと、今年公開の2リットル直4自然吸気だ。これに1個の電気モーター兼発電機を組み合わせ、駆動力アシストやエネルギー回生を行うパラレルハイブリッド方式を取る。変速機はいずれもCVTで、トルクの大きい2.5リットルがチェーンドライブ、2リットルは金属ベルトドライブである。
技術的特徴はフーガハイブリッドと同じく、エンジンとモーター、モーターと出力側の間にそれぞれクラッチを設けていること。エンジンとモーターの間のクラッチを切ればエンジンをかけずにモーターのみで走行することが可能で、また減速エネルギー回生時にはエンジンブレーキにエネルギーを食われることなく、効率良く発電することができる。モーターと出力側のクラッチを切れば、エンジンでモーターを回して発電することもできるというものだ。
エンジンスペックは現時点で公表していないが、エンジン単体の出力は2.5リットルスーパーチャージャーが175kW、2リットル自然吸気が100kW程度になるとみられる。どちらもミラーサイクルエンジンのように効率のピーク性能を追求したエンジンではないが、連続可変バルブタイミング機構を調節することで吸気バルブを閉じるタイミングを遅らせる、ミラーサイクルに似た運転領域も持つという。
モーターのスペックも未公表だが、2.5リットルについては「バッテリーセルはフーガハイブリッドと同じだが、搭載量はフーガハイブリッドの半分」(日産関係者)とのことから、バッテリーの最大出力に合わせてモーター出力も25kWとなるだろう。2リットルはさらに小さな出力になるものとみられる。バッテリーはマンガン酸リチウムイオン電池で、生産は日産とNECの合弁企業、オートモーティブエナジーサプライ社が行う。
日産はこのハイブリッドパワートレインのパフォーマンスについて、2.5リットルのほうは「3.5リットルの動力性能と2リットルの燃費」、2リットルのほうは「2.5リットルの動力性能とコンパクトカーの燃費」と説明している。なお、2リットルを下回るクラスについては「今のところ開発予定はない」(日産関係者)という。日産のハイブリッド戦略はトヨタ、ホンダと異なり、ミドルクラスセダンやSUVが主体という欧州メーカー的な展開になるということだろうか。