ホンダ N-ONE、ロングドライブでのトータル燃費は22.4km/リットル

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ホンダ・N-ONE
ホンダ・N-ONE 全 8 枚 拡大写真

軽自動車のラインナップ刷新に取り組んでいるホンダが新ジェネレーションモデルとして昨年11月に発売した軽セダンの『N-ONE(エヌワン)』。パワートレインはエンジン、変速機とも「アース・ドリームス・テクノロジー」と銘打たれた新世代機。そのエコ性能を約330kmのドライブで検証してみた。

◆グレードツアラー、ECONオフでエコラン

試乗車はN-ONEのなかでは中間的な立ち位置のターボモデル「ツアラー Lパッケージ」FWD(前輪駆動)。試乗コースは東京都葛飾区をスタートし、千葉県の犬吠埼、南房総の勝浦を巡って帰着するというもの。N-ONEには燃料消費を抑える「ECONボタン」が装備されているが、新世代のターボエンジンはトルクの出方が気持ちよく、せっかくなら余裕の走りを楽しみたいと考えて全行程OFFに。そのうえでエコランを心がけた。行程中こまめに給油することで、タンクへの空気混入による誤差が抑制されるよう試みた。

総走行は331.6km。犬吠埼近辺、銚子市街ほか、数カ所で新年初売りに伴う若干の混雑があったものの、全般的にはスムーズ。郊外では信号もまばらという、燃費的にはかなりの好条件であった。給油量は合計14.79リットル。市街地、高速、郊外の一般道を合わせたトータルの燃費は22.41km/リットルであった。平均燃費計の表示は22.9km/リットルで、2.2%ほどの過大表示。この誤差は毎給油ともあまり大きな変動はなく、エコラン時にそこそこの目安として活用できそうに思われた。

◆N BOXよりも軽快、好印象

新世代の可変バルブタイミング機構付き3気筒DOHCやCVTは、先行発売されたミニバン『N BOX』シリーズに搭載されたものと基本的に同じだが、クルマに搭載した状態でのパフォーマンスの印象はかなり異なる。N BOXが車両重量が900kg台と重く、0.66リットルエンジンにとってはオーバーロード気味で、動力性能、燃費とも新世代エンジンにしては大したことがないと感じられた。それに対し、N-ONEのほうは同等装備で100kg以上軽量であることや空力特性が奏功してか、ノイズ、振動、エネルギー効率、出力特性などエンジンの世代交代で改良された部分が好印象をもたらしている。

ファクターを細かく見てみよう。道路交通量は僅少だが赤信号にはそれなりにひっかかるという環境での市街地走行を行ったさいの平均燃費計の表示は20km/リットル強で推移。ECONボタンはOFFにしていたが、発進時に少し動き出してからじわっとアクセルを踏み込むようにすると、CVTがエンジン回転数を上げずにトルクで加速するような変速制御プログラムとなっているようで、トルク感のある走りとエコランを両立させるのは容易であった。

◆信号の少ない郊外の一般路は得意ステージ

軽ターボカーにとって、燃費上の苦手科目と言える高速巡航については、往路の東関東自動車道で100km/h巡航を続けたときに、平均燃費計は19.5km/リットル前後で安定。実燃費は19km/リットル強と推算できる。100km/h巡航時のエンジン回転数は約2800rpmと、昔の1.5リットル大衆車の4速ATモデルとほとんど同等の低さ。また、ターボ過給による大トルクのため、料金所からの加速はタコメーター表示3000rpm弱でも十分に制限速度まで加速することが可能だ。

別区間では時速80km/h巡航時の燃費をみてみた。平均燃費計の安定値は24.7km/リットル前後と、100km/h巡航より3割がた良好な結果が得られた。経済性重視ならばスピードを抑制気味に走るのがいいだろう。信号が少なく、交通の流れも時速60km/h+で流れている地方道もN-ONEにとっては得意ステージで、80km/h無停止巡航とほぼ同じ結果が得られた。

一般道の速度域で印象的だったのは、エンジンの制御。速度が乗った後、アクセルを薄く踏んでいる状態でクルーズしていると、微かにズズズズという共振音が聞こえてきた。圧縮比の低いポート噴射式ターボエンジンではあるが、ターボのブーストがかかっていない状態では空燃比をかなり薄くして効率を上げているものと推察された。

エンジン回転数でいえば1500rpmから2000rpm前半までの領域でその傾向が顕著。1800rpmあたりはとくにスイートスポットになっている感触があったが、郊外道路における少し速めの流れに乗ったクルーズ時の回転数がちょうどそのあたりとなるようセッティングされており、N ONEの実用燃費が悪くない数値を示した要因のひとつになっていると思われた。

◆都市部での燃費の落ち込みは想像より小さい

最後に、正月休み明けでかなり混雑度合いが激しかった都心走行。平均燃費計の表示は15.9km/リットルであった。N-ONEのターボモデルはアイドリングストップ機構が装備されておらず、渋滞に引っかかると燃費はもちろん悪化する。

が、N-ONEに限らず多くの軽自動車に共通する美点として、大型のエンジンを積むクルマに比べてアイドリングに必要な燃料の量が少ないということがある。N-ONEターボの燃費悪化の度合いも想像よりは小さかった。渋滞を抜けると、燃費計の表示は再びスルスルと上がっていった。なお、別の機会に交通量が中庸であった横浜界隈の市街地をターボモデルで短時間走り回ったときの燃費計の数値は17.9kmであった。

N-ONEのターボモデルのエコ性能は、トップランナーではないが全般的に悪くないというのが体感的な印象だった。とくに交通量が少なめの地方道を中心に使う場合は、ガソリン代を大いに節約できることだろう。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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