ソウルモーターショーで広大なブースを構えたヒュンダイは、その一角に宇宙船をイメージしたディスプレイを設置。そこに2050年を想定した未来デザインのモデルを展示した。
これは『ヒュンダイ・マイ・ベイビー』と呼ばれるプロジェクトの成果。日頃は何かと制約の多いデザインを行っているデザイナーたちに、一切の制約から解き放たれて創造性を最大限に発揮する機会を与えようというプロジェクトだ。4年前=前々回のソウルショーで始まり、今年で3回目となる。
ヒュンダイはソウル郊外ナミヤンの開発本拠地に加え、カリフォルニア、フランクフルト、横浜、中国、インドにデザインス拠点を展開している。そのすべてのデザイナーに、「自分ならこれをやりたい」と提案する機会を提供。各自の提案を審査し、ショーに展示するものが選ばれた。
「制約なし」といっても、テーマはある。今回は「海」、「宇宙」、「ロボット」という3つのカテゴリーを設定。「海」と「宇宙」は前回から継続のテーマだが、「ロボット」は前回の「地上の乗り物」に代わるテーマだ。
プロジェクトの事務局によれば、「ヒュンダイがロボットを開発しようというわけではない。『マイ・ベイビー』は会社の戦略とは関係なく、デザイナーがこんなものを考えてみたいという自分の欲求を具体化する場だ」とのこと。しかも「ロボット」は必ずしも移動の道具でなくともよく、乗用型ロボットやモビルスーツ的なものに加え、「人と共に移動するロボット」というユニークな提案もあった。
それを手掛けたのが、横浜にある日本スタジオに所属する前園哲平氏。彼が提案した『PHONIKA』は、「アンドロイド携帯電話が本当のアンドロイド(人造人間)になったら」という仮説に基づくデザインだ。携帯電話のテレビCMをヒントに、ユーザーと共に移動し、ユーザーの“代役”として機能してくれるロボットを考えた。電気信号で自在に伸縮できる新素材を想定することで、従来の多関節型ロボットとは違うシンプルで伸びやかなフォルムを提案した点も興味深い。
今回も多種多彩な未来を見せてくれた『マイ・ベイビー』。ヒュンダイの量産車のデザインが世界中で高く評価されている昨今だが、その背景にはこうしてデザイナーの創造性を刺激する活動がある。日本メーカーも負けていられないと思うのだが、果たして。