東洋ゴム(以下トーヨータイヤ)がマレーシアに最新鋭のタイヤ生産工場を設けた。なぜマレーシアだったのだろうか?自動車の生産台数で言えば現在東南アジア地域では250万台といわれるタイが最も多く、またインドネシア市場も100万台を達成今後さらに拡大していくとみられている。
マレーシア工場設置の内情
これに対してマレーシアの自動車生産台数は60万台に過ぎない。
最大の理由は、マレーシア国籍のタイヤメーカー、シルバーストーンの買収にあるのだという。タイヤ製造の作業には、ある程度経験からくるスキルが求められる。トレッドゴムをタイヤに巻き付ける作業一つとっても、目印となる赤外線のラインピッタリにトレッドゴム端を合わせるといった作業が必要。じつはタイヤの製造は、依然として人手に頼る部分が重要なのだ。
トーヨータイヤはすでに中国に工場を持っており、その経験が生かされているのだという。
中国では、作業を教えるためにまず中国人のリーダーを選び、リーダーに作業を教え、その後リーダーから中国人スタッフへ作業を教えるという手順を踏まなければならなかった。そのため非常に手間がかかった。
これは中国人に限らず、タイヤ製造の仕事の経験がない人全般に言えるのだという。
マレーシアにおける就業意識
中国人は中国各地から集まるため定着率が良くない。その点マレーシアは、土地柄自分の家から働きにやってくる人が多く定着性がいい。タイヤ製造には特別なスキルが必要なので、定着性のいいほうが仕事がやりやすいのだ。
しかも、マレーシアなら、傘下に収めたシルバーストーンの工場がある。トーヨータイヤの工場から距離にしてわずか4km。経験豊富なスタッフに事欠かない。
習熟したスタッフの存在感
今回の視察では、シルバーストーンの工場見学もさせてもらったが、この工場はかなり古い印象だった。そのため一部機械はトーヨータイヤの仙台工場から移設され、効率化が図られているが、いずれにしても作業に習熟したスタッフがたくさんいる。
何よりもこの人材の豊富さ、それに仕事の定着率の良さが、トーヨータイヤがマレーシアを選んだ大きな理由になっているのだという。
タイ、シンガポールとの地理的要因
もうひとつのが地理的な有利さだ。一大自動車生産国として台頭しているタイとは隣国でありASEAN域内ということもあって、需要に応じてタイヤの供給が可能。またシンガポールは大型コンテナ船の主要ポートになっており、ここから世界に向けてタイヤを輸出することができる。
トーヨータイヤは、マレーシア工場から世界に向けてタイヤの輸出を計画しているため近い将来の、世界に向けてのタイヤ生産拠点として、うってつけの場所と言えるのだ。