フォードのSUV『クーガ』がフルモデルチェンジを受け、2代目モデルが登場した。外観はフォードのデザインテーマであるキネティック・デザインを採用。余裕ある全幅を生かし、立体感のあるプレスラインやボリューム感を持たせた面構成など、躍動感のあるデザインだ。
インテリアも、ほかのクルマと似ていない個性的なインパネだけでなく、素材の選択や質感の表現なども含めて、出来の良さを感じさせている。
今回のクーガはボディが大きくなり、特に全長が95mmも延長された。その分は後席の居住空間やラゲッジスペースの拡大に使われた。これによってゆったりした余裕のある後席空間が作られている。ただ、1800mmを超える全幅は日本での使い勝手に影響する。
搭載エンジンは1.6リットルの"Eco Boost"(直噴ターボ仕様)に変わった。動力性能は134kW、240Nmの実力だ。
従来のクーガに搭載されていた2.5リットルターボに比べると性能ダウンしたものの、燃費は20%以上の大幅な向上となった。動力性能と環境性能を高次元でバランスさせるのがEco Boostの特徴だ。
クーガはフォーカスの基本プラットホームを使って作られた。でもSUVである上にAWD車であるため、重量はフォーカスに比べ300kgほど重くなって1700kg前後に達している。なので乗る前にはこの重さだとさすがにどうかなと思ったが、クーガは意外に良く走るクルマだった。
最大トルクを1600回転から5000回転まで維持するフラットなトルク特性もあって、低速域から必要十分な走りを示す。アクセルを踏み込んだときも、このトルク特性が生きて滑らかに加速が伸びていく。
いただけなかったのはサムシフトと呼ぶ6速ATのマニュアル操作だ。シフトレバーに設けられたサムスイッチを押して変速操作する仕組みは、フォーカスと同様に扱いにくいものだった。これは早期にパドルに切り替えてもらいたい。
好感が持てたのは足回りだ。クーガには走行条件に応じて前後の駆動力配分を変化させる最新のAWDシステムに加え、左右輪の駆動力を制御するトルクベクタリング機能が備えられている。
左右輪の駆動力配分を切り替える本格的なタイプではなく、コーナリング時に荷重が抜けて空転しがちな内側のタイヤにブレーキをかけるというESPの機能を使ったタイプだが、これによってコーナーでの回頭性に優れた走りが実現される。
また高めの全高の割には優れた操縦安定性を発揮したのが印象的だった。先に発売されたフォーカスの足回りも相当に良かったが、それを上回るくらいの好印象だった。
試乗した上級グレードのタイタニアムには、バンパー下に足を出し入れするだけでバックドアが開閉するシステムや、自動ブレーキのアクティブ・シティ・ストップ、斜め後方視界を確保するBLIS、横転防止機能付きのアドバンストラックなどが備えられている。
充実装備とはいえ385万円の価格は、やや高めの印象である。輸入車のSUVでAWD車であることを考えると、何とか納得できる範囲というところか。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。