ルノー『ルーテシア』の4代目モデルはとてもカッコ良いクルマに生まれ変わった。これまでの3世代のモデルが平凡なコンパクトカーだったのに、新しいルーテシアは、個性と存在感が際立つデザインが採用されている。
デザイン担当の新役員が就任し、ルノーの新しいデザイン戦略を展開する最初の第一歩がこのルーテシアなのだそうで、デザインテーマも“もう一度、恋に落ちる”というからシャレている。
ルノーはデジールというスポーツモデルのコンセプトカーをモーターショーに出品していて、それを市販車に具現化したかのような外観デザインである。このデザインはとても魅力的だ。
試乗した最上級グレードのインテンスには、インテリアもレッドやブルー、ブラウンなどの内装パネルが設定されるほか、ピアノブラック、メッキの加飾などを上手に使って独特の個性を表現している。
このあたりはフランス車らしさが表れた部分で、日本車にはなかなかマネのできないところだ。インテリアではほかに、オーディオの仕様が右ハンドル用になっているのも良い点。外国車では極めて珍しい設定だ。
ボディサイズは全長と全幅が拡大され、全高はやや抑えられ、よりワイド&ローのプロポーションが与えられた。ボディとホイールベースの拡大によって室内空間が拡大され、またトレッドも拡大されて走行安定性を高めている。ただこのクラスで3ナンバーとなる全幅はさすがに大き過ぎるように思う。
その分だけボディの安全性は高く、ヨーロッパの衝突基準で最高ランクを獲得しているから、ボディの拡大にも良い面はある。
搭載エンジンは直列4気筒1.2リッターのDOHCで、最近のエンジンらしくダウンサイジングした直噴ターボ仕様とすることで、88kW/190N・mのパワー&トルクを発生する。自然吸気なら2.0リッター級のエンジンに相当する実力だ。
このエンジンで1200kgほどのボディを引っ張るのだから、走りに余裕があるのは当然のこと。軽快な走りを実現する。組み合わされるEDCと呼ぶ6速のデュアルクラッチもATに近い自然な変速フィールを示した。ただ、スポーティな走りを楽しむにはパドルシフトが欲しいところである。
走行モードはエコとノーマルが選択でき、この切り替えによるメリハリは相当にはっきりしている。ノーマルではキビキビ感のあるを実現し、またエコを選ぶと格段に穏やかで燃費重視の走りに変わる。ちょっと差が大きすぎるので、なかなかエコを選びにくい感じがするほどだ。
タイヤが17インチとやや大きめなこともあって、乗り心地は割と硬めの印象。フランス車なのだから、もう少し乗り心地に振った味付けにしても良いように思えた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。