現行SKYより燃費は3割改善
「SKYACTIV」と呼ぶ技術群で走りも環境対応性能も高めているマツダが、次世代ガソリンエンジンの開発方向を昨年末に開いた技術説明会で示した。空気に混ぜるガソリンの量を少なくする希薄燃焼を、圧縮比を更に高めたエンジンで行い、現状のハイブリッド車(HV)並みの燃費を目指す。市販時期は明示していないが、欧州での環境規制が一段と厳しくなる2020年までには実現したいという。
次世代エンジンは11年に1.3リットルのタイプから市場投入(デミオに搭載)を始めたSKYACTIVエンジンの改良型として開発を進めている。燃費性能は現行のSKYACTIVより3割程度の改善を狙っており、今は25km/リットル(JC08モード)の『デミオ』だとゆうに30km/リットルは超える性能となる。
この性能は極めてガソリンの少ない希薄燃焼によって実現しようとしており、その道筋を付けるには高い圧縮比とディーゼルエンジンのように点火プラグなしで着火する「HCCI (予混合自己着火=Homogeneous Charge Compression Ignition)燃焼」という技術課題がある。
「空燃比35」以上の超希薄燃焼で
マツダのパワートレイン開発本部長である人見光夫執行役員によると、シリンダ内で燃焼させるガソリンと空気の重量比率(=空燃比)は「35以上」で、圧縮比は「16~18程度」までに引上げる方針だ。理論上、ガソリンが完全燃焼する時の空気との比率を「理論空燃比」と呼ぶ。その数値はガソリン1gに対し空気が14.7gなので「14.7」であり、空燃比を35以上にするということは理論空燃比より、ガソリンが半分以下の超希薄状態で燃焼させることになる。
着火しにくくなるので圧縮比を高め、HCCI燃焼というハードルの高い技術を克服しなければならない。ガソリンエンジンの圧縮比は通常10前後だが、現行SKYACTIVでは14とし、高い燃費性能とトルク性能を両立させた。これは量産車エンジンでは世界最高レベルとなっている。それをさらに16~18まで高める。
HCCIという未来技術にも挑戦
一方のHCCI燃焼は、燃費性能を大きく改善できる未来型ガソリンエンジンの要素技術として、6、7年ほど前から注目されるようになった。欧米メーカーではGM(ゼネラルモーターズ)やダイムラーなどが試作エンジンなどを公表している。水面下では世界の主要メーカーが大学などの研究機関とも連携しながら開発を進めているのが実態だ。
このHCCI燃焼の課題は、低温時(燃焼室内)や高回転域での失火などによって、燃える範囲がまだ狭いことだ。このため点化プラグによる燃焼との併用が欠かせず、制御もより複雑になる。突破すべき壁は厚いが、マツダは「燃料噴射や動弁系の工夫」(人見氏)などでHCCIの運転領域拡大や燃費性能の改善に手応えを掴みつつあるようだ。
開発中の次世代SKYACTIV がHV並みの燃費を実現したからといって、HVの否定にはつながらないだろう。このエンジンを使うことで、モーターやバッテリーの小型化を通じた、より経済的で燃費性能の高いHVやPHV(プラグインHV)も可能になるからだ。開発の加速に期待したい。