【三菱 アウトランダーPHEV 氷上試乗】超低μ路で四駆性能の極限に挑む…斎藤聡

試乗記 国産車
三菱・アウトランダーPHEV 氷上試乗
三菱・アウトランダーPHEV 氷上試乗 全 20 枚 拡大写真

三菱『アウトランダーPHEV』の氷上試乗会が長野県立科町の女神湖湖上で行われた。

全面凍結する湖上でアウトランダーPHEVの性能を体験してみようという趣向。バッテリーは大丈夫なのか?ツインモーター駆動という変わった4WDシステムはどんな走りを見せてくれるのか。そんなことを考えながら試乗会場に向かったのだった。

エンジンと大容量バッテリーで効率的に走行

まずは、改めてこのクルマの概要を紹介しておこう。SUVであるアウトランダーをベースに、2リットルのガソリンエンジン(MIVEC)に12kwhという大容量バッテリーを搭載し、ハイブリッド化したのがこのクルマ。急速充電を含む充電機能を持たせたプラグインハイブリッドであることがアウトランダーPHEVの特徴だ。

前輪を駆動するエンジンに加え前輪駆動用モーターと、後輪駆動用モーターによる4WDシステムで、前後2つのモーターを搭載するのもPHEVの特徴の一つに挙げられる。一般道では、バッテリーが満充電になっているとEVモードでクルマの流れに逆らわず普通に運転していても、50~60キロくらいはモーターだけで走ってしまう。つまり遠出をしないで近隣だけを走るのであれば一度もエンジンがかからないことも珍しくない。

バッテリーが少なくなったり急加速をした場合には、エンジンが発電に使われバッテリー充電量を増やす。いよいよバッテリーが少なくなると駆動も行うが、低速域ではモーターが主役でエンジンはアシストの役割となる(シリーズモード)。高速道路では逆に、エンジンによる駆動がメインとなる。これは高速道路ではエンジンのほうがエネルギー効率がよくなるからだ。強い加速をするとモーター駆動が加わり加速性能をアシストする。またバッテリー残量が少ないときは必要に応じてバッテリーを充電する(パラレルモード)。大容量バッテリーを搭載し、外部充電機能とセルフ充電機能の両方を備えているというわけ。このバッテリーは電源としても使うことができる。1500Wの大容量アウトプットが可能なので、アウトドアでの便利な電源として使えるばかりでなく、非常用電源としても機能する。

LOCKモードが提供する安定感

少し話が逸れたが、バッテリーに厳しい氷上でのアウトランダーPHEVがどうだったかというと、普段とあまり変わらなかった。すぐにバッテリーが少なくなってしまうということもなく、また必要に応じてエンジンをかけバッテリー充電モードにもなっていた。三菱によれば、「日本の冬であれば、どこでも使い勝手はあまり変わらずにPHEVの性能が引き出せる」ということだ。ハンドリング路で強くアクセルを踏み込むとちゃんとエンジン+モーター駆動の強い加速を得ることができる。

感心したのは、横滑り防止装置との相性がとてもいいこと。考えてみれば当然のことなのだが、例えば横滑り防止装置が働き、駆動力を抑えブレタイヤにブレーキをかけるといった場面では、駆動力の断続絞り込みがとても滑らかで素早い。氷の上で無造作にアクセルを踏み込んだ時も、一旦エンジンに燃料を送り込んでから燃料を絞るのではなく、電気的にモーターの動きを制御するので、無駄な駆動力が出ない。あたかも精密なアクセルコントロールをしているかのように必要な駆動力しかアウトプットされないので、まるで自分の運転が上手くなったように走れてしまうのだ。

4WDを得意とする三菱らしい発想ではないか思うのだが、同車には4WDにECO、AUTO、LOCKの3つのモードが設定されている。なかでも興味深いのがLOCKモードだ。前後の駆動力は(プロペラシャフトによって)機械的につながっているわけではないので、LOCKは不可能。そのためLOCKしているような安定感と駆動力が出るようにプログラミングされているのだという。実際に走らせてみると、確かにLOCKのほうがAUTOよりも安定感があり、リヤタイヤの落ち着き(安定感)が高い。円旋回路でドリフトさせてみると、前後の駆動配分の微妙なコントロールからくる挙動の変化が見て取れ、機械的につながった4WDのロックモードとは異なることが判るが、これは極限状態のマニアックな部分の話。普通に走っているときにはむしろ安定感や安心感があり、滑りやすい路面では有効なモードとなっている。

ちなみにAUTOはどうかというと、氷上での話に限れば、センターデフをフリーにした4WDそのままの動きで、路面の滑り具合によって前後のタイヤの回転差が出るので、曲がりやすいが、リヤの落ち着きもいまいちといった印象。もっとも横滑り防止装置がオンになっていれば、これ効いて最終的には安定した姿勢に落ち着く。

氷上でもその性能を遺憾なく発揮

結論としては、4WDとして十分に優秀な性能を備えているし、懸念されたバッテリーの持ちも、気温0度付近の状況ではとくに心もとないという印象は受けなかった。それよりもエンジンがバッテリーを充電し、ある程度のバッテリー残量を確保してくれるため、ほぼいつでもモーター駆動が得られるところに感心した。改めてアウトランダーPHEVの優秀さと使い勝手の良さを実感することができた。

電気自動車は航続距離が短く、ハイブリッドはEVモードでの走行距離が短い。テスラのような例外的に航続距離の長いEVもないわけではないが、充電時間などの課題(これはテスラに限らず)、今現在、もっともリーズナブルなEV、ハイブリッド系自動車といえばスバリ、アウトランダーPHEVであろう。

《斎藤聡》

斎藤聡

特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. 【スバル レヴォーグレイバック 新型試乗】「アウトバック」以来、30年にわたる挑戦の成果…諸星陽一
  2. 東京E-Prix 市街地コースは臨海都心に準備…フォーミュラE[写真32枚]
  3. 日産『エルグランド』一部仕様変更、安全装備を強化
  4. シトロエンが新型SUVクーペ『バサルト・ビジョン』を発表 南米で2024年内に発売へ
  5. メルセデスベンツ、新型パワートレイン搭載の「GLA180」発売…高性能モデルAMG「GLA45S」も追加
  6. アウディ最大のSUV計画は生きていた! ベース価格で1500万円オーバー? 2026年までに登場か
  7. オールラウンドに使えるスポーツタイヤ「SPORTMAX Q5A」が登場!モータースポーツに超本気なダンロップに注目…東京モーターサイクルショー2024PR
  8. ルノー『キャプチャー』新型、4月4日デビューへ
  9. ドライブ中の突然の曇り問題にサヨナラ! DIYでウインドウ曇り防止 ~Weeklyメンテナンス~
  10. ホンダ『フリード』次期型予想に注目! ボディ拡大? デザインは?…土曜ニュースランキング
ランキングをもっと見る