【アクセラ開発者への10の質問】Q8.深化する人馬一体、その真髄とは?

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マツダ・アクセラ 2.0リットル AT
マツダ・アクセラ 2.0リットル AT 全 16 枚 拡大写真

マツダが2013年11月21日に発売した新型『アクセラ』。発売から4ヶ月での受注台数は2万5000台を超える好調振りを見せている。

同社の"SKYACTIV TECHNOLOGY"や“i-ACTIVSENSE”を搭載し、ガソリン、ディーゼル、ハイブリッドと3種類のパワートレインをラインナップ。さらに、新世代カーコネクティビティシステム“マツダコネクト”を採用した新型アクセラの誕生秘話と魅力を探るべく、開発陣に「10の質問」を行った。

Q8.深化する人馬一体、その真髄とは?
A8.人とクルマが互いを理解しあいながら、最高の性能を作り出すこと目指す。細かくエンジンを制御することで、ドライバーの意思を忠実に走りへと反映している。

初代ユーノス『ロードスター』から注目を集めるマツダの「人馬一体」というコンセプト。しかしあの頃の人馬一体感と、最新の『アクセラ』が伝えてくる人馬一体感は、明らかに違うものだ。

「そこは深化している部分です。“人馬一体とは何ぞや”と、模索しながら開発していったんですよ。昔は人馬一体感を、瞬間瞬間のクルマの反応を楽しむものだと考えていました。ステアリングを切った時のクルマの動き、キビキビとした動きですね」と車両開発本部副本部長である松本浩幸氏は語る。

ところがクルマの開発を続けダイナミクス性能を追い求める中で、人馬一体もより奥深い領域へと踏み込んでいくことになっていったという。

「人馬一体にもステップがあると思うんです。ファーストステップは今言ったようにステアリングを切った瞬間の動き。『これ、他のクルマとは違うぞ』と思わせる俊敏な動きです。しかしこれは入力に対する動きだけ、つまり一方方向の反応だったんですね。それを我々は“オープンループ”と呼んでいます。最近、我々が目指しているのは“クローズドループ”と表現しています。ドライバーがインプットして、反応を感じてまたインプットする。ドライバーとクルマがお互いを分かりあいながら、最高の性能を作り出していく歓びを表現できないか、そういう姿がマツダが考える人馬一体のあるべき姿なんじゃないか、と考えています」(松本氏)。

クルマの反応を鋭くしていくだけでは、単にレーシングカーへと向かうようなものだ。誰もがレーシングドライバーではないし、コンマ一秒を削り取るようなドライビングを目指している訳ではない。人馬一体を深めていく作業は、そういったベクトルではなかった。

「今はサードステップだと考えています。『CX-5』以降ずっと探し求めていますが、小さくステアリングを切った時の動きによって、ドライバーが大きく切った時の動きまでイメージとしてつながっていくことが予見できるというものです。まだまだ進化させたいと思っていますが、現時点ではアクセラがやっとサードステップに届いたかな、という自負を持っています」(松本氏)。

パワートレイン開発本部長の廣瀬一郎氏からは、アクセラで実現できた新しい領域のエンジン制御について、興味深い話が聞けた。

「アイススケートやスキーで滑る時には、踏み出す足の感触を確かめながら力を入れますよね。そうした力のタメ、加速のプロファイルみたいなものをイメージして、足に荷重が乗ってくるのを感じながら、徐々に込める力を強めていっています。クルマでも前のクルマに追いつきたいというような状況の時、ドライバーはアクセルをドンと踏み切るのではなく、徐々に踏み込んで踏み込み量を調整しているんですね。その踏み込みの加速度をさらに微分した、躍度(やくど)と言う尺度で判断しています」。

「アクセルの踏み込み量だけでなく、その勢いを躍度のレベルで判断することによって、ドライバーはこういう加速を欲していると言うのを判断して、空気を入れてやるんです。それに燃料を噴射することによって、求めているトルクの出方を実現できるので、思ったように加速していくようになるんですね」。

具体的にはスロットルバルブの制御と空燃比、燃料噴射の制御によって、それを実現していると言う。一般的にエンジンのECUは、ドライバーがアクセルを踏み込む量によってスロットルバルブの開度を決め、負荷に応じて噴射量を変えることでトルクの発生量をコントロールしている。ところが、このアクセラではトルクの出方の輪郭、プロファイルまでデザインしていると言うのだ。

「ドライバーがこうアクセルを踏んだら、こう加速して欲しいというイメージから逆算して、そのトルクを実現する空気の導入パターンを作るんです。あまりドンと反応させてしまうと、ショックが大きくなって、実際の加速度は高くても加速“感”は高くありませんし、ドライバーがイメージする加速とも違う。このあたりは感性がモノを言う部分ですね」(廣瀬氏)。

ECUが単に計算で噴射量を弾き出しているのとはレベルが違う。頭脳というか、感性まで備えるようになった感がある。もちろん、実際には計算処理によるものだが、技術者の作り込みが、人間味的なものを感じさせるのだ。

「電子制御式のスロットルになったことで、アクセルの踏み込んだ量で一様にスロットルバルブを開けるのではなく、そこに思想があると空気の入れ方と燃料の混ぜ方に工夫ができるようになった、ということです。アクセルはドライバーがエンジンに意思を伝えるペダル、インターフェイスですから、その動きをクルマの動きに置換するという作業を大真面目にやっています。何パターンも作って、いくつも試しながら人間の感性に近いものを探っていくんです」(廣瀬氏)。

松本氏からは人馬一体の概念とそれを追求する姿勢が、そして廣瀬氏からはそれを実現する手段であるクルマに対する飽くなき技術者魂が伝わってきた。マツダが目指している人馬一体は、どこまで達するのだろう。高い環境性能を備えながら、ドライビングが楽しい。そんなクルマの未来に期待を抱かせてくれた。

《高根英幸》

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