【ダイハツ タント & ホンダ N-BOX+ 350km 試乗】用途に応じて選ぶN-BOX+、マルチに使えるタント

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高山正寛氏
高山正寛氏 全 40 枚 拡大写真

昨秋フルモデルチェンジを受けた新型ダイハツ『タント』と、2013年の軽販売台数チャンピオンである『N-BOX』『N-BOX+』における“走り”とこのカテゴリーで最も求められる“使い勝手”についてロングドライブを通じて比較する今回の試乗レポート。第2回目では、モアスペース系モデルが最もその実力を発揮する「使い勝手」の部分について、個性的な両車の魅力をさぐってみた。

用意したモデルはタントの中でも人気の高い「カスタム RS“SA”」、そしてN-BOX+カスタムは先進安全装備を搭載した「G・Aパッケージ」である。

◆従来型のネガを潰して機能向上のタント、ラゲージの使い勝手に秀でるN-BOX+

まずタントだが、やはり他車にはない、つまりオンリーワンな機能である「ミラクルオープンドア」に注目したい。そもそもこの機能は2代目タントから採用されたもの。前後ドアの中にピラーを組み込むことで側面からの安全性を確保した上で、圧倒的とも言えるピラーレス開口部を実現。前後シートへの乗降性のしやすさは言うに及ばず、後述する巧みなシートアレンジにより、チャイルドシートの取り付けの容易さや背の高い荷物など積載性の高さも魅力である。

また2代目は運転席側のリアドアをヒンジ型にしていたのだが、新型はこれをスライドドアに変更。使い勝手が向上したことは間違いないが、何よりもユーザーの声を真摯に聞き入れ、良いものはどんどん取り入れる、といった開発側の姿勢には賛辞を送りたいほどだ。

一方のN-BOX+はそのコンセプトが大きく異なる。元々後席を後ろに配置することで足元も含め、広い室内空間を実現したN-BOXに対し、N-BOX+は逆に後席を前にオフセットしラゲージスペースを拡大。ホンダが特許を持つ「センタータンクレイアウト」を使い、後席床を斜めにして低い部分まで荷室を拡大したことで低額で「車いす仕様車」に後から変更できるユニバーサル仕様にしている点だ。また標準装備のマルチボード等を使うことで荷室を上下に区切ったり、簡易ベットとして使うことができるなど流行りの“車中泊”にも対応する。

◆ミラクルオープンドアを踏襲し座席スライド幅拡大で使い勝手向上のタント

ではそれぞれの使い勝手を見ていこう。まずタントだが前述したミラクルオープンドアの採用により乗降性は抜群。特筆すべきは今回助手席シートのスライド量を2代目より100mm拡大し、なんと380mmもロングスライドできるようにしたことだ。

さらにこの助手席には今回リクライニングとスライドを独立して運転席側から操作できる2つのシートバックレバーを軽自動車としては初設定した。例えば子供連れのママが運転席から降りられない状態で家族が乗降してきた際「もう少しシート位置を変えたい」と思った時など簡単に助手席を操作できるなど、使ってみると予想以上に便利であった。もちろん助手席シートバックテーブルも採用している。

運転席周りの収納スペースに関しては両車とも優秀だ。カップホルダーや折りたたみ傘などちょっとしたものを置きたいと思った際、それに応える収納が用意されている。また運転席から見える視界に関しても良好。タントにはサイドアンダーミラーを装備するが、N-BOXシリーズに搭載されているサイドビューサポートミラー(ピタ駐ミラー)は左側方2箇所が見られるので利便性はさらに高い。

◆センタータンクレイアウトを活か後部荷室空間を有効活用したN-BOX+

後席の乗降性に関してはリアスライドドアの開口部寸法がポイントとなるが、N-BOX+は640mmとミニバン並みの大開口部を誇る。ピラーにはアシストグリップも装着され、地面からフロアまでの高さは380mmなので乗り降りは楽だ。

一方、タントの場合、運転席側と助手席側とでは寸法は異なる。運転席側は595mm、助手席側は605mmとN-BOX+より短いのでタントが不利に思えるかもしれないが、例のミラクルオープンドアにより少し助手席ドアを開けるだけでこの差は解決する。ちなみに助手席にアシストグリップを設置しており、フロアまでの高さも370mmなので、乗降性に関しては同等と言えるだろう。

◆配慮が行き届いた装備・機能群タントに一日の長

ではシートアレンジや荷室についてはどうだろうか。これに関しては両車のコンセプトがまったく異なることで使い勝手ほかも大きく異なってくる。

そもそもN-BOX+は前述したようにシリーズの中でもリアユーティリティを重視したN-BOXの派生車種である。後付オプションで車いす仕様に変更できるユニバーサル仕様のコンセプトは素晴らしいし、簡易ベットにできるシートアレンジもアウトドア派やちょっとした旅行に出かけた際の休憩時には重宝する。しかしその分、後席のレッグスペースは狭くなる。もちろんそれを求める人には標準のN-BOXを買えばいいだけなのだが、結果としてはオールマイティに使うことはできない。

タントの強みは、生活シーンに合わせて多彩なシートアレンジを持つこと。前述したフロントだけでなくリアシートも分割可倒式で240mmスライドが可能。さらにリクライニング機構もあり、助手席を前に出し、後席を後端までスライドさせればフロア長は695mmとなる。数字ではわかりづらいかもしれないが、要は身長170cm超えのスタッフが足を伸ばしても助手席に届かないほど、大型ミニバンの2列目並の広さとなる。また軽No.1のカップルディスタンスなど実際クルマに乗ってみると思わず「広い」と言ってしまう位驚くはずだ。そして補足になるが「これは便利!」と思わず唸ってしまったのが格納式リアサンシェードだ。後席に座るお子さんが寝ている時など強い日差しを軽減してくれる。こういう部分は本当に気が利いているのである。

◆超低床開口で車いすにも対応…N-BOX+

ラゲージの使い勝手に関してはN-BOX+が独特の構造を持っていることで一概に比較はできないのだが、このクルマならではの特徴として地面から床面までが330mmと後席よりさらに低く、オプションのアルミスロープを付けることで自転車の積載も極めて容易になる点は評価できる。

一方、タントは前述したシートアレンジのほか、リアシートを前に倒した際、座面が足元に格納できることでフラットかつ広大なラゲージスペースを作り出すことができる。結論から言えば「用途に応じて選ぶN-BOX+」「マルチに使えるタント」と言ったところだろうか。

◆アクティブセーフティは同レベル

さて、最後に昨今のクルマの安全トレンドである「先進安全装備」について見てみよう。まずN-BOX+はフィットに続き追突軽減ブレーキなどをセットにした「安心パッケージ」を設定。元々VSA(車両安定デバイス)標準装備化していたが、このパッケージには前席用の容量変化タイプのサイドエアバッグと前後席対応のサイドカーテンエアバッグをセットでのグレード設定、10万円以上とやや価格が高めなのがネック。一方でタントの場合は“SA”が付くグレードにスマートアシストを5万円高で標準装備。サイドエアバッグなどはオプションになるが、選択の幅という点で考えるとタントのチョイスは悪くない。

まとめとしては元々ヒットモデルあった2代目タントに対し、ライバルを研究して開発したN-BOXシリーズ、さらにスズキからは『スペーシア』、三菱/日産連合からは『eKスペース』『DAYZルークス」という強力なライバルが登場したことで今後このモアスペース系の市場はますます激化していくだろう。その中で後出しという形にはなるが3代目の新型タントは常に「その先」を見つめて開発したことがあらゆる点から体感できるのである。

単に広さだけならば体積を増やせばいいだけだが、そこに使い勝手の良さと存在感、さらに安全性なども磨きこんでいる。軽自動車販売ランキングで2013年12月から3カ月連続1位を獲得しているタントの実力は納得できるものだ。他社勢がこの新王者に今後どう対抗していくかも見どころだ。

《高山 正寛》

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