アメリカでIIHS(米国高速道路安全保険協会)が実施する自動車アセスメントにおいて、2012年よりスモール・オフセット前面衝突テストが導入された。クルマの前面のうち4分の1だけを40mph(64km/h)でバリアに衝突させるものだ。
スモール・オフセットでは、クルマにかかる衝撃をわずかなスペースで吸収し、いなさなければならないため、メーカーにとっては相当に難しい衝突安全テストだ。導入当初となる2012年のテストでは、世界中のメーカーが苦戦した。コンパクトカーであれば「Poor(不可)」が大半を占め、ミドルクラスやラージクラスでも「Marginal(可)」がようやくで、「Acceptable(良)」や「Good(優)」は、ごくごく限られた数しか獲得できなかった。しかし、2013年のテストでは数多くの車種が「Good」を獲得。課題が与えられたときの自動車メーカーの対応力の高さを証明する格好となったのだ。
そんな中、ボルボは抜き打ち気味の実施であった2012年から優秀な成績を得た数少ないメーカーであった。
「ボルボは、その遙か以前からスモール・オフセット衝突を想定したクルマづくりをしてきました」と日本のボルボ広報担当者は言う。
ボルボは1970年に独自の交通事故調査チームを発足させ、これまで約4万件もの事故を調査してきた。そして、その結果をクルマの開発にフィードバックしてきた歴史を持つ。その調査を通して、ボルボは1980年代には「立木などの衝突(いわゆるスモール・オフセット衝突)への対策が必要」と気づいていたのだ。そのため1992年に発売されたボルボ『850』から、スモール・オフセット衝突への対策を導入。現行モデルはすでに第3世代のものになっていたのだ。
つまり、2012年にスモール・オフセット衝突試験が導入されたからといって、ボルボは新たな対策を行う必要はなかった。また、2012年のテストで好成績を得たのは『S60』であったけれど、これはたまたま、その車種がテストを受けた結果であり、テストを受けなかった他の車種も同じように好成績を得られるはずだとも言う。
規制や課題が先にあり、それをクリアするために安全性能を高めるのではなく、自らの理想に向けて安全性を高めるというボルボの姿勢が、スモール・オフセット試験の最初からの好成績の理由であったのだ。