日本語版の「中国鉄道時刻表」、8月発行へ

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日本語版の「中国鉄道時刻表」の表紙イメージ。8月に発行される。
日本語版の「中国鉄道時刻表」の表紙イメージ。8月に発行される。 全 7 枚 拡大写真

日本語による「中国鉄道時刻表」(中国鉄道時刻研究会)が8月に発行される。日本語版の中国鉄道時刻表が発行されるのは戦後初めてとみられる。中国で一般に販売されている時刻表を日本語化したものではなく、日本の時刻表に準じた体裁(日式)でまとめているのが特徴だ。

中国では、日本の「JR時刻表」(交通新聞社)や「JTB時刻表」(JTBパブリッシング)に相当する「全国鉄路旅客列車時刻表」が、現地の中国鉄道出版社によって販売されている。言語はもちろん中国語で文字も簡体字。日本人からするとやや難解だ。とはいえ漢字とアラビア数字の組み合わせだから、時刻表の読み方さえ知っていれば大体理解できる。それを考えると、日本語による時刻表をわざわざ作る必要はないはずだ。

「中国の時刻表は分かりにくいのです」と、中国鉄道時刻研究会の主宰者の一人、東京大学大学院の何ろく(「ろく」は王へんに力)さんは話す。日本の時刻表の場合、基本的には路線ごとに掲載ページをまとめており、列車の配列も始発駅を基準として出発時刻順に並べている。これに対して中国の「全国鉄路旅客列車時刻表」は、一つの区間が離れたページに分かれて記載されていることが多く、列車の配列も時刻順ではなくばらばらだ。これでは細かな乗り継ぎプランを立てることが難しいし、特定の時間帯に何本の列車が運転されているのかすら、簡単に調べることができない。

こうしたことから何ろくさんは、路線別・時刻順に列車を並べた日式の時刻表を制作できないものかと以前から考えていたという。日本の鉄道趣味団体「日本鉄道研究団体連合会(日鉄連)」が、やはり日式の台湾時刻表を制作していることも刺激になった。

しかし、全長が約1500kmの台湾の鉄道に対し、中国の鉄道路線はその60倍以上の約10万km。列車の本数も多く、人海戦術に頼るしかない。そこで何ろくさんは2013年11月、友人のtwinrailさんとともに、時刻表の制作主体となる中国鉄道時刻研究会を設立。時刻データの入力作業ボランティアを募集したところ、もともと中国の鉄道が好きだった鉄道ファンのほか中国語を学んでいる人、中国在住の日本人、さらには現地の鉄道事情に詳しい香港人ら約20人が手を上げた。

中国とは縁のなかった人も入力作業に参加している。鉄道ファンの中村公彦さんは、時刻表から運行図表(ダイヤグラム)を作成するフリーソフト「OuDia」で日本の鉄道路線のダイヤグラムを作成していたが、これまで中国を訪れたことはなかった。しかし、研究会のボランティア募集を見て参加し、時刻データの入力をしているうちに日本と中国のダイヤグラムの違いに気づき、関心を深めたという。

大勢の人出を必要とする時刻表の制作だが、工程自体は比較的単純だ。ダイヤグラム作成ソフトや表計算ソフトを使って時刻データを入力し、その後は時刻順に並べ替えたデータを表デザインに流し込むだけ。しかし、実際は相当な苦労があったという。

たとえば、ある区間内にバイパス新線や連絡線など複数のルートがある場合、どのルートを通っているのか分かりにくい列車も多い。そのため、まずは中国の鉄道路線を細かく分解したリストを作成する必要があった。その作業を進めている間にも新線の開業やダイヤ改正が相次ぎ、せっかく制作したデータを一から作り直したこともあったという。

表デザインに時刻データを流し込む作業も当初は手作業で行っており、これにも時間がかかった。そこでtwinrailさんらが表計算ソフトのマクロを「見よう見まね」で開発し、「ボタン一つでデータの流し込みができるようになり、制作時間を大幅に短縮できました」。こうした試行錯誤を重ねながら時刻表ページの制作は進み、現在は校正作業のほか路線図と営業案内の制作が進んでいる。

何ろくさんは「中国の鉄道は(衝突事故で注目される結果になった)高速列車だけではありません。日本では消滅しつつある昔ながらの夜行列車が今も多数運行されていて、多種多彩です」と話す。「時刻表は鉄道趣味の『取っかかり』のような存在。読みやすい日式の時刻表なら、日本の鉄道ファンにも中国の鉄道に興味をもってもらえると思います」。

「中国鉄道時刻表」の創刊号(2014年夏号)は8月17日、東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開催される同人誌即売会「コミックマーケット86」の日鉄連ブースで先行販売を実施。8月20日頃からは、AMAZONや中国専門書店の東方書店、鉄道書コーナーがある書泉グランデなどで販売する。販売価格は1900円(先行販売は1000円)の予定。

中国鉄道時刻研究会は「旅行客や中国に進出している日本企業等の需要を見込みながら、毎年2回の発行を予定しています」としている。

《草町義和》

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