『ティアナ』の発売から2年近く前に北米版ティアナである『アルティマ』が発売されている。あるいは中国でも1年くらい前に中国版のティアナが発売されている。アメリカから2年遅れ、中国からも1年遅れでの日本での発売である。
今さらこの時期にわざわざティアナを日本で発売する意味があったのかどうか、そんな風に思わせるタイミングだ。
クルマそのものも全幅が1800mmを超えるなどアメリカや中国向けのサイズである。あるいは基本設計の時点が古いために最新の安全装備であるエマージェンシーブレーキが装備されていない。ティアナよりも前に発表された『スカイライン』や『エクストレイル』には装備されているのにだ。
今どきのクルマ選びでは、自動ブレーキの有無は大きなポイントだから、高級車とうたうクルマでこれがないのは厳しい。
ますますこの期に及んで日本で売り出す意味があったのかどうかと思ってしまう。月間の販売目標台数もわずか520台などという信じられないくらいに控えめな数字である。
内外装の仕様はそれなりの仕上がりだ。サイズの余裕があるためか外観デザインは高級車らしいものに仕上げられている。初代ティアナ以来のモダンビリングを継承したインテリア回りの質感もまずまずだ。
ハードウェアを見たなら、クルマはそんなに悪くない。2.5リッターエンジンだけに絞られたエンジンとCVTの組み合わせはまずまずだし、エコカー減税の免税には届いていないが燃費もそれなりだ。静粛性のレベルも高く、床面に振動が伝わっていることがわずかに指摘したいポイントとなる程度だ。
ダメなのはクルマ作りの方向性というか志である。日産は今は外資系の自動車メーカーだが、会社名が日産自動車というくらいで、日本に由来する自動車メーカーである。
西洋人や日本人向けに作ったクルマをついでに日本人にも売るのではなく、日本人向けに最適のクルマを作り、それを外国でも売る、そんな気概でクルマを作ってほしい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。