MVアグスタの3気筒エンジンシリーズには、スーパースポーツの『F3 800』とネイキッドの『ブルターレ 800』、その派生モデルである『ブルターレ800 ドラッグスター』がある。
しかし、ストリートモタードの『リヴァーレ800』は、このシリーズの中でも、カテゴリーの違うモデルである。
実際、車体は基本コンポーネントをなるべく共用しながら、独自の作り込みがされている。フレームは前部を作り変え、ヘッドパイプを寝かして前方に移動。前後サス伸び切り状態でキャスター角を1.5度寝かせ、ホイールベースは30mm長い1410mmだ。
サスペンションストロークも、前後125mmから、前150mm、後130mmに延長。シート高はブルターレより71mm高の881mmとかなり高い。着座位置を前方に移すだけでなく、上面の流れるようなフォルムを重視しているのだ。
跨るとシートが高く、着座位置が前方にあって、ハンドルがカラダの近くにある。オフロード系の流れを汲んだライポジだ。車体は背が高くても安定していて扱いやすく、神経質さはない。
吸排気系の変更と電子制御が最適化されたエンジンは、他モデルよりもスムーズだ。フリクション感がなく、鼓動感を含んだエンジンの回り方が一層心地良い。
最大トルクが向上されたうえに、そのピークの手前からトルクが盛り上がり、3000~4000rpmの低中回転域は街中で十分に実用的だ。また、高回転域の伸びも良くなり、スポーツできる領域が広くなっている。
ミッションにはオートシフターが標準装備で、これは公道でもなかなか実用的だ。シフトアップ時のクラッチ操作が必要なく楽であるし、これまでのクセでスロットルを一度戻そうとしても、スムーズさが損なわれない。
走り出したとき、最初は目の位置が通常より10cmほど高いことに違和感があったが、これにはすぐに慣れる。でも、うっかり普通のロードスポーツのときのように振舞ってしまうと、サスストロークの大きさが災いし、過剰に姿勢変化させてしまいがち。無駄がなく、スムーズなマシンコントロールが大切だ。
着座位置が高く、大きな体重移動の効果が得られるのだから、コーナーリングではマシンに逆らわず、その効果を殺さないように大きいリズムでしっかり曲げてやらないといけない。すると、軽快かつ素直に向きを変えていく。積極的になれて、その分、しっかり曲がってくれる。
上体が起きているので、見通しの悪いタイトなコーナーもこなしやすい。サスストロークも大きいから、少々荒れた路面でも走破性が良い。この操る面白さが豊かなことが、リヴァーレの魅力なのだ。
パワーモードは最もシャープな“スポーツ”が、意外にも扱いやすい(4つのパワーモードを任意に選択可能)。ダイレクトに反応してくるので、確信を持ちやすいのだ。1速でのフル加速でフロントが持ち上がったときも、スロットルワークとマシンの挙動が一致している。もちろん、マイルドな“レイン”は寛容で、ミスも補ってくれる。
気になる足着き性だが、日本仕様はローダウンモデルも用意している。リヤのリンクの変更とプリロードダウン、フロントフォークの突き出し量を大きくし、低くなった車高に対処してサイドスタンド長を短縮。シート高は30mm以上低く、操ることの濃厚な面白さを、より多くの人が楽しめるものとしている。