マツダは今秋、主力コンパクトカー『デミオ』の第4世代モデルをリリースする。そのプロトタイプに触れる機会を得た。今回のモデルチェンジの目玉のひとつである新SKYACTIVエンジンについてリポートする。
新型デミオのラインナップを見ると、1.3リットル直4ガソリンと1.5リットル直4ターボディーゼルの2種類のエンジンがあり、変速機はガソリンが5速MTと6速AT、ディーゼルが6速MTと6速AT。また、ATモデルのみだが両エンジンともにAWD(4輪駆動)が用意される。
エンジンはどちらも世界トップレベルの熱効率をうたうSKYACTIVテクノロジー。JC08モード燃費はまだ判明していないが、ディーゼルの6速MTが燃料タンクの容量をATの44リットルから35リットルに減らし、車両重量をJC08モード計測時の等価慣性重量(ローラーにかける負荷に影響する)のしきい値である1080kgに抑えてきているのが興味深い。「当然コンパクトカー中トップの値を狙います」(デミオの開発にかかわるエンジニア)とのことで、軽を除く非ハイブリッド乗用車として初の30km/リットルの大台超えも期待できよう。
そのデミオ・プロトタイプを実際に走らせた時のパワーフィールだが、ガソリン、ディーゼルともに、非常に活発であった。
エンジンの印象を良くするのに大いに貢献しているのがスカイアクティブ6速AT。発進や極低速などを除くと常にロックアップし、内部の遊星ギアの組み合わせのみで変速するという特性は、初搭載されたSUV『CX-5』以降、一貫しているのだが、自動変速、マニュアル操作による変速とも反応速度はいちだんと上がっているように感じられた。
新型ガソリンエンジンは最高出力68kW(92ps)、最大トルク121Nm(12.3kgm)と、数値的にはきわめて凡庸だが、適切なギア段を素早く選択するATのおかげで、クローズドコースのワインディングを速めに流しても動力性能面で不満を感じる局面はほとんどなかった。試乗中、92psという絶対出力の小ささを意識したのは唯一、上り坂で低速から全開加速を試みたときくらいであった。エンジンそのものの出来もNV(騒音・振動)の少なさに加え、サウンドチューニングも程よくなされるなど良いレベルのものだったが、感性評価ではライバルを大きく引き離すような驚異的な部分はなかった。
さて、新型デミオで最も注目を浴びると思われる、新開発の1.5リットルディーゼルだが、最高出力が105psとガソリンより約14%強力なだけあって、動力性能はガソリン車より全般的に優れていた。特筆に値するのはNVの優秀さ。マツダが先にリリースした2.2リットルディーゼルのSKYACTIV-Dと比べてもみっちりと回るフィールはこちらのほうが上で、優位に立っていると感じられるほどだった。ちなみにディーゼルの変速機はMT、ATとも6速だが、ATでも十分切れ味の良さを体感できるので、ATを選んでもイージードライブのためにドライビングプレジャーを犠牲にするといった感はないだろう。
今回はクローズドコースを短時間試乗するにとどまったので簡単なインプレッションにとどめておく。発売後にあらためて詳報をお伝えしたい。