【スバル レヴォーグ 1.6GT-S 試乗】 愛犬家にも薦められるハイバランスなグレード…青山尚暉

試乗記 国産車
スバル・レヴォーグ 1.6GT-S
スバル・レヴォーグ 1.6GT-S 全 17 枚 拡大写真

『レヴォーグ』の1.6リットルモデルには、標準の17インチタイヤを装着するGTと、18インチタイヤ&ビルシュタインダンパーをおごるGT-Sがある。

後者はアイサイト付き限定で、価格差は2.0GT比で28万円高程度となり、300万円をほんの少し越える。しかし、「REAL SPORTS TOURER」をうたうレヴォーグを手に入れ、スポーツワゴンとしての走りを味わうなら、迷うことなくこちらである。

それにしても、レヴォーグがワゴンとして素晴らしくスタイリッシュに見えるのは、フロント部分のデザインもさることながら、前後のタイヤとホイールハウスのすき間の小ささだ。ボクのげんこつが入らないほど攻めている。例えばBMWやアウディの佇まいが素晴らしくカッコ良く見えるのも、そんな一面があるからだ。

1.6リットルの直噴DITターボの水平対向エンジンは170psというスペック。2リットルターボの300psと数値で見れば物足りなさを感じそうだ。が、SIドライブのIモードではたしかに下のほうからトルクがモリモリ盛り上がるというほどではないにしても、SIドライブをSモードにセットすれば、箱根ターンパイクや芦ノ湖スカイラインの上り坂を3名乗車で駆け上ってもまったく不満のない動力性能を発揮してくれる。

まず2500回転付近でトルクの盛り上がりを見せ、3000回転からは水平対向ユニットならではの鼓動と文句なしのスムーズさを爽快(そうかい)感とともに発揮してくれる。パドルシフトは全車標準だからスポーティーな運転もしやすい。

前席の乗り味は、GT系の美点と言える濃厚な快適感こそ得られないものの、1.6GTよりはるかに低重心感覚が強く、引き締まり、ソリッドなタッチを示す。路面とのコンタクト感の強さはかつての『レガシィ』を彷彿させるものだ。

視界は全方向良好。ジャストなボディーサイズと合わせ、クルマとの一体感、フィット感は、大柄になりすぎた5代目レガシィに望めないものと言っていい。

それはそうと、1.6GT、あるいは2.0GTと比較した場合、後席の乗り心地の良さは圧倒的である。ビルシュタインのダンパーと聞くとスポーティーで硬いイメージがあるが、タイヤの路面との追従性が極めて高く、実は乗り心地面でも有利になるわけだ。実際、GT系の後席に座ったときに感じられる突き上げ感、振動はほぼ皆無。よりリニアでスポーティーな操縦性とともに、後席の乗り心地にこだわるなら"ビルシュタイン"装着車である。

とすれば、確認はしていないが、荷室部分の乗り心地!? にも優れるかも知れず、後席または荷室に愛犬を乗せるのにより適している仕様とも言える(後席エアコン吹き出し口がないのは残念だが)。

荷室容量は大柄な5代目レガシィ同等の482リットル(レガシィ490リットル/上面のみ)。開口部地上高はレガシィの600mmに対して610mmとわずかに高いだけでごく低く、開口部に段差なく、中大型犬なら無理なく乗り降りできるだろう。

荷室フロアは奥行き1070mm(レガシィ1050mm)、幅手前1370mm、奥1080mm(レガシィ1405/1085mm)、後席をフラットに格納したときのフロア長1630mm(レガシィ1675mm)、高さ770mm(レガシィ830mm)と余裕のスペース。ゴルフバッグを4セット積めるのだから大容量である。後席格納時にヘッドレストを伸ばせば、身長170cm程度の人なら足を伸ばして寝ることも可能だ。

しかもフロア下には前後2カ所に床下収納を完備。ネット付きポケットも完備しているため、転がりやすいものの収納にも困らないから便利だ。ただし、欧州のワゴンではお約束のパーテーションネットはオプションでも用意がない。

そんな1.6GT-Sはアイドリングストップを完備。16.0km/リットルの燃費性能を誇る(レガシィは最高14.4km/リットル)、レギュラーガソリンで乗れるスポーツツアラーである(2リットルモデルはアイドリングストップ未装備。ハイオク仕様で13.2km/リットル)。

ズバリ、価格、REAL SPORTS TOURER性能、AWDであることを考慮すればまずまずのエコ性能、そして乗り心地を含めた総合力でバランスがとれているのがこのグレードだろう。実際、売れ筋はこのグレードだ。付け加えれば、豪雨の中での試乗経験もあるが、全天候型クルーザーとしての資質もまた極めて高いのだ。

スバルがレガシィと切り分けた国内専用(サイズ)のレヴォーグを企画してくれたことは、スバリストならずとも大歓迎のはずで、ワゴンブームの再来も期待できそうだ。

ただ、雪国のユーザー、冬場には注意点アリだ。この18インチタイヤ装着車だとタイヤとホイールハウスのすき間がギリギリのため(だからカッコいい)、スタッドレスタイヤ、チェーンの装着は難しいとのこと。その場合は17インチに換装する必要があります…。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
ペットフレンドリー度:★★★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がける。現在、ドッグライフプロデューサーとしての活動も広げている。

《青山尚暉》

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