どちらかといえばファミリー層を意識した地味な『ワゴンR』に対し、エアロパーツやディスチャージランプなど、より個性を出した外観を持つ『ワゴンR スティングレー』。こちらにも「S-エネチャージ」が装備された。
実は新しいスティングレーの新装備はそれだけではない。軽自動車初となる駐車場での出し入れを支援する機能が付いた。といっても標準装備ではない。内容は後退時にダッシュセンターの大型スクリーンに映し出される画像の中で、左右からクルマの後方に近づいて来る移動物体(クルマ、自転車、人など)を感知し、モニター内にそれが近づいて来る側に警告を出し、同時にブザーで知らせるというもの。さらにカメラが映し出す後方画像は最終的に俯瞰画像に切り替わり、白線に対してきちっと駐車しているかを確かめることが出来るようになっている。
ちなみに、静止している物体や、後方から近付いて来る物体を検知することはできない。軽初となるのはこの移動物体の検知機能である。また、この機能はメーカーオプションで、スマートフォン連携ナビゲーション装着車に装備することが出来るものだ。個人的には元々スクエアなボディであるうえ、十分に見切りが良く視界も悪くないので、この装備が必要とは思えないが、それでも市場の需要は多いのだろう。
暖色系の内装だったワゴンRとは対照的に、ブラックでまとめたスティングレーの内装は、それだけでパーソナルカー的なイメージを強調している。とはいえダッシュセンター以外のデザインは基本的にワゴンRと一緒。後方カメラを備える試乗車は、大型スクリーンが付いているために異なる印象を与えるが、基本的にデザインは同じである。
「エネチャージ」が装備されて以降、メーターはそれ自体がエネチャージのステータスインフォメーションの機能を持ち、ステータスごとに照明の色が変わる。青は通常の運転状況。緑は効率の良いエコ運転の状況。そして白はエネルギーを回生中でエネチャージが働いていることを示す。
さらにエネルギーフローインジケーターが付き、今回のS-エネチャージからは 加速時にモーターアシストが始まるとエンジンとバッテリー双方から駆動力を得ている表示が出るようになって、これで従来のエネチャージ車との違いを見出すことが出来る。
走りに関してはワゴンRと何ら変わるところはない。因みに従来からのターボモデルも存在するが、そちらにはS-エネチャージは装備されない。以前はターボ車に乗ってしまうとそのパワーの差から、乗るならターボ車と思ったが、このS-エネチャージの再始動からの加速感を味わうと、実際のパワー差は従来のままなのだが、スムーズに加速する様からこれで十分と感じるから不思議である。
ちなみにモーターアシストが機能するのは15~85km/hの範囲。いつモーターがアシストされているかを体感するのはまず不可能で、エネルギーフローインジケーターに頼るしかない。つまり、モーターのアシストは非常に限定的で、あくまで燃費を向上させるのが目的。パフォーマンス指向ではないからだ。しかし、考えによっては軽自動車のパワー制限が撤廃されたら、よりパワフルな加速をするものに変えることもできる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
おすすめ度 :★★★
中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。