【GARMIN HUD インプレ前編】安価・安全・安心の新コンセプトで登場したHUD

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GARMIN HUD
GARMIN HUD 全 19 枚 拡大写真

「nuvi」シリーズでポータブルカーナビの個性派モデルを次々と繰り出してきたGARMINが、”超”がつくほど斬新な製品を発売した。スマホのカーナビアプリの「外部ディスプレイ」として機能する「HUD (Head-Up Display)」がそれだ。カーナビを見やすい位置に設置すると前方の視界が妨げられるというジレンマを解消すべく誕生した斬新なコンセプトだが、その実用性はいかに?

◆カーナビの進化形かスマホ対策の産物か、意表をついた新コンセプト

本機の名称である「HUD」はヘッドアップディスプレイを意味する。ヘッドアップディスプレイとは人間の視界に様々な情報を表示する技術の総称だが、ここでは単に、ダッシュボード上に設置したパネルに(またはウインドウに反射させて)情報を表示する透過型ディスプレイと考えていいだろう。

自動車用の透過型ディスプレイはスピードメーターなど、これまでにいくつかの採用例があるが、本機はこの技術をカーナビに利用した点が新しい。従来のカーナビは見やすい位置に設置すれば車外を見るための視界が妨げられ、視界を妨げない位置に設置すれば、視線の移動量が多くなるため走行中に注視のは危険、というジレンマがあった。カーナビが抱えていた安全上の根本問題を解決するためのHUDというわけだ。たしかに透過型ディスプレイなら視界を妨げることがなく、見たいときに視線をほとんど移動せずに見ることができる。

PNDなどのポータブルカーナビは、スマートフォン向けナビアプリの登場によってそのマーケットを奪われてしまい、日本からPNDを撤退するメーカーが相次いだ。そのかわり、ドライブレコーダーというスマホでは代用できない製品に主力を移してきたわけだが、本機もスマホに真似のできない機能を実現した、非スマホメーカーのスマホ対抗策といえるだろう。

本機は純粋にディスプレイだけに機能を絞っており、スマホのカーナビアプリの「外部ディスプレイ」として機能するのも大きな特徴だ。GARMINならば本機にカーナビとして必要なハードウエア、ソフトウエアを内蔵することも難しくなかったはずだが、あえてそうしなかった。スマホアプリを活用したほうが地図データの更新や操作性などの面でメリットがあると判断したのだろう。スマホに対抗していかなければならないからこそ、スマホを取り込んだといえるかもしれない。

スマホに対抗していくのはメーカーの都合だが、ユーザーから見ても、何でもかんでもスマホ一辺倒になってしまうのは選択肢が狭まるので好ましくない。スマホに対抗することでこれまでなかったような画期的な製品ができるのであれば歓迎すべきことだ。

◆取り付けはただ置くだけ、反射板は日本では必須

本機はスマホを分厚くしたくらいの大きさで、角度を自由に変えられるスタンドが付いている。このスタンドの裏にはやわらかなゲル状の粘着剤があり、これでダッシュボード上に固定する。といっても、べったり貼り付けるのではなく、置くだけといった方がいい。ゲル状の粘着剤はあくまでも滑り止めだ。電源はシガーライターから供給するようになっており、1分とかからず取り付けができる。

本体には透明な反射板が付属しており、そこに情報が投影される。この反射板は簡単に取り外しできる構造で、取り外してフロントガラスに投影する事もできるのだが、残念ながら日本ではこの使い方はできない。このような使い方をするにはフロントガラスに専用のシールを貼る必要があるのだが、日本では法的な問題でそれができないからだ。

取り付けができたら次はスマホに専用アプリ「マップルナビ for HUD」をインストールする。このアプリは地図データをスマホ内に保存するのでダウンロードに時間がかかる。あらかじめWi-Fiが使えるところでインストールしておいたほうがいいだろう。

ちなみに、「マップルナビ」はカーナビ専用機向けにキャンバスマップルが提供しているカーナビソフトウエアで、それをスマホ用アプリにしたのが「マップルナビ K」、さらにそれをHUD対応としたのが「マップルナビ for HUD」だ。カーナビ専用機にも使われているソフトウエアとは心強い。また、マップルナビKは1,400円の有料アプリだが、同じ機能を持つ「マップルナビ for HUD」はGARMIN HUDの価格に含まれており、実質無料となっている。

スマホと本機をBluetoothで接続すれば、使用する準備は完了だ。Bluetoothというと以前はパスコードの入力などなにかと面倒なものだったが、最近は全く手間なくパッとつながるのでありがたい。

◆昼間でもちゃんと見える、表現力も予想以上

実際の使用方法は、スマホアプリのマップルナビ for HUDの操作が全てで、取り付け後の本機を直接操作することはない。マップルナビ for HUDの画面は普通のカーナビアプリと同じようにスマホに表示されるが、それにプラスして本機の表示が加わるということだ。

では、本機の表示はどうなのか。まず表示される内容から紹介しよう。表示されるのは、次に曲がる方向、その曲がる場所までの距離、レーン表示、到着予想時間、それに現在のスピードだ。曲がる方向の表示は90度曲がる右折、左折だけでなく45度の矢印が表示される分岐もある。自動車用の透過型ディスプレイはシンプルなものが多いが、意外と情報量は多いといえるだろう。

ではその見やすさはどうかというと、昼間で周囲が明るくても問題なく見える。発光素子に使われているVFD(蛍光表示管)は非常に明るいため、自動車用のデジパネなどにも使われてきたもので、光量は十分だ。これだけ明るいと夜は眩しくなってしまいそうだが、本機は外光に合わせてVFDの明るさを自動調整するようになっているため、夜でもちょうどいい明るさとなる。

ところで、こういった表示は透過式とはいえ気になって煩わしく感じてしまうのではないかと心配していたのだが、実際に使ってみるとそんなことは全くなかった。外を見ているときはディスプレイの表示は全く気にならない。というより、ほとんど知覚されない。不要なときは表示されていないかのようなのだ。

なぜそんな都合のいい見え方になるのか。それは目からの距離の違いがあるからだ。外を見ているときはディスプレイの表示は近すぎてピンぼけとなるが、人間の目はそういったものを無意識のうちに視覚から除外する。ウインドウガラスが非常に汚れていても外を見ているときは気にならないのと同じことだ。

蛇足になるが、こうした透過型ディスプレイの元祖とされる戦闘機のヘッドアップディスプレイでは、こういったことは起こらない。なにしろ戦闘機では兵器の照準を合わせるためにヘッドアップディスプレイがある。パイロットが外を見ている時に、その景色とディスプレイの表示が重なってどちらもクッキリと見えるようになっているのだ。これは光学系の非常に複雑な設計によって可能となっている。

本機を含めた自動車用の透過型ディスプレイは、そのような複雑な設計にはなっていない。そのため、ドライバーが外を見ているときはディスプレイの表示はほぼ知覚されないわけだが、自動車の運転ではそのほうが好都合といえるだろう。

《山田正昭》

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