【トヨタ MIRAI 試乗】重量級セダンの割に走りは軽快…松下宏

試乗記 国産車
トヨタ MIRAI
トヨタ MIRAI 全 18 枚 拡大写真

水素をエネルギーとして走る燃料電池車『MIRAI』は極めて画期的なクルマだ。水素を燃料に走る市販車はこれまでになく、MIRAIは自動車の歴史に新しい1ページを書き加えたクルマである。

このような画期的なクルマが自分の生きている時代に市販されたことを、とてもうれしく思うし、それが我が国のメーカーによって作られたことを日本人として誇りに思う。

MIRAIはクルマとして考えると、けっこう大きい。全幅が1800mmを超えているので、日本国内で使うには一定の制約も受ける。重さもけっこう重い。ハイブリッド車の『カムリ』や『SAI』と同じくらいかと半ば勝手に予想していたら、ざっと300kgくらい重い1850kgもあるので驚いた。

このボディを引っ張るモーターは113kW/335Nmの実力で、重さを考えると果たしてどうかと思ったら、走りには意外なくらいに余裕があった。発進時に瞬時にトルクが立ち上がる、電気モーターのなせる技だ。軽くアクセルを踏むと、電気自動車のような感覚で静かにスムーズに走り出していく。

更にアクセルを踏み込むと電気自動車とは違っていろいろな音が入ってくる。特に空気を吸い込むブロアーの音が入ってきて、そのことでクルマを走らせている実感が得られる。静かな走りにも一定の魅力があるが、走りの実感もまた良い。

駆動方式はFFで前述のように重量が重い。ただ、MIRAIはフロント荷重が57.8パーセントと通常のFF車に比べるとかなり軽く設定されている。前後の重量バランスに優れているのだ。

それだけでなく、重さのある燃料電池スタックをクルマの中心の低い部分に搭載している。これが重心高を下げることにつながっていて、その意味でもバランスの良いクルマになっている。

なので重量級の大型セダンの割には走りには軽快感がある。ワインディングではけっこう良く曲がるし、重さを感じさせない走りが得られる。

もちろんFFなのでコーナーでは一定程度にアンダー傾向が出るし、横滑り防止装置のVSCも早めに介入するようなセッティングになっているから、スポーティカーを走らせるのとは違うが、走りは全体としてとても良かった。

不満に感じたのは、前述のようにボディが大きく重すぎることと、プリクラッシュセーフティシステムが従来型のミリ波レーダー方式であること、パーキングブレーキが足踏み式で電気式ではないことなどだ。

燃料電池車には洋々たる未来が開けているが、それに至るまでにはいろいろな課題がある。特に大きいのはインフラの整備で、これは自動車メーカーに解決できる課題ではない。燃料電池車とインフラがどのように普及していくか、大いに注目したい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. マツダ、電動セダン『EZ-6』世界初公開、24年発売へ SUVコンセプトも…北京モーターショー2024
  2. 【ホンダ ヴェゼル 改良新型】開発責任者に聞いた、改良に求められた「バリュー」と「世界観」とは
  3. トヨタが新型BEVの『bZ3C』と『bZ3X』を世界初公開…北京モーターショー2024
  4. Sズキが電動マッサージ器を「魔改造」、25mドラッグレースに挑戦!!
  5. <新連載>[低予算サウンドアップ術]“超基本機能”を駆使して「低音増強」を図る!
  6. 中国製部品の急成長で2025年以降日本製の車載半導体は使われなくなる…名古屋大学 山本真義 教授[インタビュー]
  7. 見逃せない! ホイールのブレーキダスト除去術 ~Weeklyメンテナンス~
  8. 郵便局の集配車が「赤く蘇る」、KeePerが8000台を施工
  9. 多胡運輸が破産、首都高のローリー火災事故で損害賠償32億円
  10. ホンダ『ヴェゼル』マイナーチェンジで3グレードに集約、納期改善へ…「HuNT」「PLaY」新設定で個性強調
ランキングをもっと見る